「オープン戦、広島３－０ロッテ」（１６日、マツダスタジアム）

　お目覚めじゃ！広島の新外国人、サンドロ・ファビアン外野手（２７）が“来日初本塁打”となるオープン戦１号を放った。「１番・指名打者」先発し、三回に左翼席最前列に２ラン。実戦通算４１打席目にして生まれた待望の一発だった。オープン戦は打率１割台と苦しんでいたマイナー通算１０４発の助っ人が、ようやく実力の片りんを示した。

　一瞬の静寂の後、マツダスタジアムが大歓声に包まれた。白球がフェンスを越えたことを確認し、ファビアンは悠々とダイヤモンドを一周する。「マツダスタジアムの雰囲気は特別。カープファンはエネルギーをくれるので、モチベーションがすごく上がるし、楽しくプレーできているよ」。鯉党の不安を振り払う一発に声が弾んだ。

　待望の瞬間は三回に訪れた。１死二塁で迎えた第２打席。１ストライクから、サモンズが投じた低めのチェンジアップを振り抜いた。打球は高々と舞い上がると、左翼席の最前列に着弾。左翼・石川慎がジャンピングキャッチを試みるほど、ぎりぎりで飛び込んだが「感触はよかったよ」と納得の一振りだった。

　１５日の試合を終えた時点で、オープン戦の打率は・１０７。「まだ自分のアプローチは完璧にできていない」と苦しみ、試行錯誤を続けている。この日の試合前には朝山打撃コーチから「試合でも結果のことは考えずに、自分のスイングをするように打席に入ってくれ」と助言を受け、「今まではその考え方ができていなかった」と力強いスイングを取り戻し、結果につなげた。

　頼もしい存在もいる。ファビアンを日本へ導いた来日中のエルドレッド駐米スカウトだ。１４年に３７本塁打で本塁打王を獲得し、１６年からのリーグ３連覇にも貢献した伝説の先輩助っ人。「体もスイングの形も問題もない。心配していない」と力強く背中を押され、自分を見失うことなくプレーできている。

　これでオープン戦初の２試合連続安打を記録。新井監督も「よかったですね。昨日もヒットが出たし、他の打席の内容も上がってきている」と笑顔。「ちょっとしたところでガラッと変わると思う。外国人選手は開幕してみないと本当に分からない。メカニック的に直さないといけないところは見当たらない。慣れとタイミングだと思います」とさらなる適応に期待を寄せた。

　日本へのリスペクトを忘れない真面目な２７歳。残り２週間を切った開幕に向け、「いい準備をしないといけない。まずは日本の野球に慣れることだと思う。シーズンにいい形で入っていきたいよ」。打線のカギを握る男のエンジンがかかり始めた。

　◇サンドロ・ファビアン（Ｓａｎｄｒｏ　Ｆａｂｉａｎ）１９９８年３月６日生まれ、２７歳。ドミニカ共和国出身。１８０センチ、８１キロ。右投げ右打ち。外野手。１４年にジャイアンツと契約し、翌１５年から同国のサマーリーグでプロ初出場。２２年にレンジャーズに移籍すると３シーズン（マイナー）で５６本塁打をマーク。昨年９月６日にメジャーデビューを果たした。