ラグビー元日本代表・大野均氏、引退前釜石から移籍打診も断り「かえって迷惑に」
ラグビーの元日本代表で、歴代最多の98キャップを誇り、5月に現役引退を発表した大野均氏(42)=東芝=が5日、インタビューに応じた。引退発表から2週間。釜石シーウェイブス(トップチャレンジリーグ)からの誘いを断ったことなどを明かし、「食べる量が減りました。以前の半分くらいで、おなかいっぱいになる」と笑う英雄に、現在の心境を語ってもらった。(聞き手・構成=大友信彦)
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ラグビーのない生活に寂しさは、と聞くと、大野氏はこう答えた。
「現役じゃないということで寂しい部分はあるけれど、自分の体と相談して決めたことだし、喪失感はないです」
引退を決意させた右膝の痛みは、2年前からあったという。それでも昨夏のトップリーグ・カップでは全6試合に出場した。
「試合ではアドレナリンが出ますから。アップまでは多少痛くても、ピッチに入った瞬間には痛みを忘れていました」
だが、リーグ戦開幕を控えた12月の練習試合で膝の痛みが激化。以後は別メニューで調整し、さまざまな治療も試したが、痛みは消えなかった。
「クラブハウスで治療をしているとき、外では若い選手がバチバチ激しい練習をやっていた。うらやましかったし、それができないことで(引退の)踏ん切りもつきました」
実は引退発表前、釜石シーウェイブスの桜庭吉彦GM(53)から、移籍の打診があったという。
「声をかけていただいたのはうれしかったけど、釜石へ行ったとしても戦力になる自信がなかった。膝が良くなる見込みはないし、かえって迷惑をかけてしまうと思い、お断りしました」
当面は社業に専念しながら、ラグビーへの恩返しの方法を模索する。
「まず東芝の王座奪回に向け、サポートしたい。コーチングも勉強したいし、コロナが収束したら、普及イベントなどでも役に立ちたい。自分にしかできないことを見つけていきたいです」
現役時は無縁だったSNSも、このほどツイッターを開設。投稿は少ないが、フォロワーはたちまち1800を超えた。
「コロナが収束したら、ファンの方々に直接感謝する機会もつくりたい」
どんなに激しい試合をしたあとでも握手や記念写真に応じ、ファンに愛された男は、最後までファンへの思いを忘れなかった。