「USアマ」の彼に(下)

 さあ、本戦。多分、イーブン2日間。ストロークプレーはイーブン前後でしょうから、このくらいで良いかなどと、考えてはダメ。自分のベストを尽くすだけです。ストローク2日間をしのいでくれれば、マッチプレーは何が起こるか分からないので、頑張ってほしいと思っていました。

 それに、ここ2~3年の彼の堅いイーブン前後のゴルフは、自分の置かれている立場で危なくないゲーム、リスクを伴わず大叩きもしないグループの勝利に貢献する。無意識にそのようなゴルフをするようになったのではと…感じています。

 2011年にこちらに来て寄せの特訓を受け、が然やる気になり、その後は積極的に楽しんで試合にも出ていましたが、これがいつの間にか守る、ベテラン風に“まとめること”がしっかり身に付いてしまったと理解しました。

 これは残念。ここはアメリカで、誰も貴方のことは知らないです。ここでは貴方がどのようなゴルフをしても、誰も気にしていないのです。今の貴方の腕前でどのくらいの結果が出せるか、ちょうど良い機会です。このところの貴方は、自分ができることを試そうともしていない、小心なのです。初心に戻り、思い切りどこまでやれるか、やってみなさい!思い切りやってみることで、結果はどうであれ、すがすがしい気持ちになります!これが大事です。

 まだ、自分のゴルフを守っていくほど、うまくない。ゴルフには運がつきもの。幸運は本人が引っ張るのです。幸運の女神を道ずれに、たくさん食べて寝ること、これが一番大事。心配な事があればいつでも連絡しなさい。これが私の思いです。

 ストロークプレー初日は4アンダー(2位タイ)かなり良い。2日目、コースが暗くなり4ホール残し4オーバーで翌朝に延期。「心配しないで、大丈夫だから。明日は良い日です」と伝える。頑張ってそのまま4オーバーでトータル、イーブンの14位タイで予選通過。やった!

 3日目からマッチプレーで世界ランキングで上位の強者たちも多く、どのような対戦相手でも彼にとってすべてが身(実)になる楽しく厳しい試合。

 初日、何と15歳で全米オープンに出たコール・ハマーと対戦。ハマーがパー5でバーディー、彼はイーグルでアップするなど調子良く4-3で勝ち。2日目、彼の辛抱強いしぶとさで、延長の19番ホールで勝ち、3日目、対戦相手も彼も、調子の良くない日で、かなりラッキーな勝利をつかみました。

 さて、TVにかなり長く放映される準決勝を迎えることに。これは、相手がうまい。グリーン上にボールが乗ってもピンとの距離がかなり近い。長いパットを沈める確率は明らかに近い方が有利です。ずーっと相手がリードでやっとAS(オールスクエア)になったのは1回、11番ホールだけ。16ホールで勝負は決しましたが、これは、相手がうまいのです。相手のうまさから何かを学ぶことです。それこそが、良い経験というものです。

 決勝戦進出は逃したけれど、全米アマ初戦を素晴らしい結果で終了したこと、彼にとって今後のゴルフに向けて何かを得たことを確信しています。やっとスタート地点に来たのでは?とも思います。

(LPGAインストラクター・今井貞美)

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