ポップスの巨匠・林哲司氏の秘蔵っ子が初アルバムを発表 松城ゆきのに聞く

 インタビューに応える松城ゆきの=東京・浜松町
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 上田正樹の「悲しい色やね」や杏里の「悲しみがとまらない」など多くの名曲、ヒット曲を世に送った作曲家の林哲司氏がプロデュースした新人歌手・松城ゆきのが、16日にファーストアルバム「Le Premier Pas」をリリースした。抜てきを受けた松城が、スタートアップにあたっての決意や、巨匠との創作秘話をデイリースポーツに明かした。

  ◇  ◇

 林氏といえば、松原みき「真夜中のドア」、竹内まりや「September」、中森明菜「北ウイング」、菊池桃子や杉山清貴&オメガトライブの一連の作品など、ハイセンスなポップスで一時代を築いた巨匠だ。

 近年、シャンソン界から「粋なフレンチポップスが似合う個性」の若手シンガーを探しており、2017年のイベント「シャンソンの夏」で、シャンソン歌手でプロデューサーでもある旧知の奥野秀樹氏から松城を紹介された。

 タイトルが「最初のステップ」を意味する「Le Premier Pas」は、林氏が全6曲中4曲の作曲と、全曲のアレンジを手がけた。松本伊代のカバー「サヨナラは私のために」を除く5曲が新曲で、作詞家には売野雅勇氏、松井五郎氏、竜真知子氏、吉元由美氏と、ポップス黄金時代をけん引したビッグネームがずらり。林氏は「最高にしてベストの作品になった」と自負する。

 松城は桐朋学園芸術短大で声楽を専攻し、在学中に東宝ミュージカルアカデミー1期生としてミュージカルを学んだ。多くのミュージカルに出演する一方、13年からはシャンソンの世界でも活動する実力派だが、世間的にはまだまだ知られているとは言えない。

 今回の抜てきに、松城は「よく人に『なんで?』って聞かれるけど、私が聞きたいよ!」と、冗談交じりに本音をのぞかせつつ、「私のような無名の歌手にこうやってくださったのはありがたいです」と素直に感謝した。

 世代の離れた林氏との作業は、学ぶことが多かったという。

 「大先生だからもっと怖いかと思っていたら、お優しい雰囲気で。ミュージシャン、歌い手、作曲家、プロデューサー、送り手としての観点で、視野を広げて考えてお話ししてくださるので、一言一言がためになることばかり。すごく人の立場で話してくださる。1カ月、1年、もっと長い(スパンの)ことを考えていて、色んな課題を出してくれて、育てていただいている感じ、ホントに貴重な、かけがえのない時間をいただいています」

 その一環が、初挑戦の作詞だ。松城によると、林氏は「産みの楽しみって言わないでしょ?産むのが苦しいのは当たり前。作詞家、作曲家は大変な思いをしている。簡単に作ったものはない。当たり前だと思わないでほしい」、「今、歩き出した素直な気持ちを詞に乗せてみたら」という2つの考えから、作詞を課したという。

 その曲は最終曲「真っ白な靴」で、「こんなにできないのかというくらいできなくて」と、産みの苦しみを味わった。最終的には松井五郎氏の助けをあおいだが、林氏も「本人の素直な思いにも捨てがたいところがあった」と、一定の評価を与えている。

 アルバムは極上のフレンチポップス「素敵がいっぱい」で幕を開け、林氏らが活躍したポップスの黄金時代をほうふつさせる仕上がりになった。松城も「ステキで、上品で、気持ちいいほど。繰り返し聴きたくなります」と手応え十分で、「私、ずっと自分の歌声を聴いてるんですよ。ナルシシストみたいになってる。林先生も、音楽家の一番の幸せはそこだとおっしゃっていて」と打ち明けた。

 デビューアルバムが完成して「今までは自分のためだけに歌えば良かったけれども、そうそうたる先生たちに素晴らしい楽曲をいただいて、私はこの音楽を皆さんにお届けする手段にならなければいけない。初めて芽生えた感情、使命感が生まれた」という松城。

 「いただいた宝物を子供のような気持ちで抱きしめて、私を飛び越えて送り出していきたい」と、決意を口にしていた。

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