劇団唐組主宰者で劇作家の唐十郎さんが４日に急性硬膜下血腫のため死去したことを受け、東京・新宿の花園神社で、同劇団の座長代行・久保井研氏が取材に対応した。

　久保井氏によると、唐さんは１日午前中に自宅で転倒。中野区内の病院へ緊急搬送されたが、４日に死去した。最後は唐さんの息子・大鶴義丹ら家族が看取った。カンパニーは初日準備をしていたところ、訃報が入ったという。カンパニーは弔問したといい、「唐さんは気持ち良く寝ているような顔で、何度か呼んで見たんですけど、返事しない。いつも寝ている唐さんのようだった」と明かした。

　久保井が唐さんと最後に言葉を交わしたのは、４月１３日だった。「花園神社の前に神戸、岡山と２週公演をして参りました。そこへ出発する４月１３日朝に座長に挨拶に行ったところ、車を止めてある所まで１０メートルほど１人で歩いてきて『行ってらっしゃい』と声をかけて頂いた」と述懐した。

　久保井氏は「２週間芝居をしたものを何とか舞台の幕を開けて元気になった唐さんに見てもらおうと思っていましたが、叶いませんでした」と悔しさをにじませつつも、「ただ唐さんはテントと共に居ますと思うので、何より芝居が好きだったので、客席の後ろから見守ってくれていると思う」と語った。

　近年の様子としては、１２年５月に自宅で転倒。それ以降は現場に来ることはかなわなかったという。「何とか留守番しなくてはと言う思いで我々で引き継いだ。唐さんは現場にこそ出てこれなかったけど、毎回芝居を見ることを楽しみにしていた。劇中歌を口ずさみ、カーテンコールで舞台に呼んだ時も涙と鼻水で一杯になっている唐さんの姿を見た事がある。それほど芝居が好きな方でした」と人柄を語った。

　唐さんはカンパニーの仲間に対して「とにかく観客が待っている。何があっても、芝居をやるんだ。飯を食うように芝居をやる」と話していたという。その言葉を胸に、劇団唐組は舞台「泥人魚」がきょう５日に予定通り初日を迎える。「紅いテントが唐さんの分身のようなもの。ここでしかできない芝居をやる」と意気込んだ。