舞台女優とガラスデザイナー
猫は雄猫含めて、後ろ姿で全てを語れる大女優だと思います。無駄なことをせずに語れるしぐさや表現力は根っからの女優です。色気や物憂いしぐさなどは私の憧れです。いつも遠くを見つめる切ない瞳も魅力。実は何も考えていないのかもしれませんが勝手にその姿には“哲学”を感じます。猫は犬と違って、どこかでウソをついていて、こちらがダマされている感があります。化け猫はあっても化け犬にはあまり怖さを感じないのもそのせいでしょうか。やっぱり“女優”だなと思います。
そんな私も女優を14歳の時から続けてきました。初めて演劇の舞台に立ったのは20歳の時でした。最初は緊張ばかりで舞台の魅力がわかりませんでしたが「空想家族」という、早坂暁さんがお書きになり、市原悦子さんや辰巳琢郎さんとのお芝居(1989年)の頃から面白いと思うようになった気がします。黒柳徹子さんと共演させていただいた「ローズのジレンマ」という作品も印象的です。独り芝居で竜馬の妻、おりょうさんを演じたのが2007年。「大変でしょう」と言われましたが、私の場合独りの方が気が楽なようです。
反対に新宿コマ劇場があった時には吉幾三さんの舞台に立たせていただいたこともあります。100人も入らない小劇場から大劇場まで経験してきましたが、吉幾三さんを通じて商業演劇の座長の迫力と魅力を存分に感じた公演でした。舞台袖にあった美空ひばりさんから贈呈された大きな鏡もコマ劇場の歴史を教えてくれました。
そんな女優業も並行してここ10年はガラス・デザイナーとしても活動しています。NHKの番組がきっかけにガラス工芸作家の石井康治さんに吹きガラスを教えていただいたのが25年前。先生が50歳の若さで突然亡くなられ、ブランクがあった後、小樽で若手の作家さんとの出会いから05年に初めて個展を開きました。2年に1度の個展は昨年で10年の区切りを迎えました。
私が生まれたスウェーデンは「ガラスの王国」とも言われ、小さい頃からたくさんの魅力ある作品を見てきた影響は大きいようです。ガラスは繊細さの中にかわいらしさと、大人っぽさがあり、流派もないので創作は自由です。ちなみに我が家にはたくさんのガラスの置物がありますが、猫は敬意を表してか(?)上手によけて通ります。今後も新作を発表していきたいと思います。