ゲッツ板谷氏の実話元に東映印映画

 暴力絡みのせい惨な事件が相次ぐ中、東映配給作品らしいヤンキー映画『ワルボロ』が5月9日に公開される。眉をしかめそうな人もいそうだが、描かれるのは、自分の歩むべき道をあちこちぶつかりながら見出そうとする若者の成長物語であり、友情といった普遍的なテーマだ。とりわけ、悪い輩に引き込まれそうになる息子を体を張って阻止しようとする母の愛に感涙。コレ、ほぼ原作者の作家・ゲッツ板谷氏の実話なのだ。

 昨年夏、横浜の撮影現場を訪れると板谷氏が家族連れで見学に現れていた。聞けば2週間の撮影期間のうち、約10日も顔を出しているのだという。「そんなバカいないでしょう(笑)。でも少しでも撮影の力になれることがあれば。だから最後まで見に来ますよ」とニヤリ。さすが元不良。義理人情に堅い…と思っていたら、今回は、そんな板谷氏を上回る熱い、いや、暑っ苦しい男の情熱によって本作の企画が実現したため、彼の想いに応えようとほぼ日参していたようだ。

 それが前作『ワルボロ』(07年)でもプロデューサーを務めた東映ビデオの菅谷英智氏。前作公開後、すぐに続編の話があったのだが、板谷氏が脳出血で倒れて、原作小説を書ける状態ではなかったという。そうと分かっていても、菅谷氏は月に一度は板谷氏を訪問し、全く仕事の話をせずに、おいしいカレー店やラーメン店の話題を振っては帰っていくという関係をずっと続けてきたという。

 板谷氏が振り返る。「ふたを開けたら前作『ワルボロ』の原作を出版してから5年たっていた。もう続編の企画は流れたと思っていたら、小説『メタボロ』と『ズタボロ』の2冊を出版した頃に、菅谷さんが『そろそろやりましょうか』と。もう菅谷さんの原作への気に入れ具合が半端じゃないんですよ。なんだろ?この人気持ち悪いなと思うくらい」

 そう菅谷Pを茶化しつつ、板谷氏もまんざらでもないようだ。

 原作は、東京・立川でやんちゃをしていた板谷氏の自伝的小説だ。前作『ワルボロ』は中学生時代で、今回は高校生編。順調にワルへの道を歩んでいた主人公コーイチ(永瀬匡)だったが、不良の縦社会からのし上がってやろうと親族のヤクザと交流を持ったことからヤクザ予備軍となり、文字通りズタボロな日々を過ごすことになってしまった葛藤を描く。東映印の映画らしい、激しいどつき合いもさることながら、何がすごいって、そんなワルどもの面前でも一向にひるまずに息子を叱り飛ばす母ちゃん(南果歩)だ。

 「小説で、何が言いたかったかと言うと『こんなダメな息子なのに最後まで付き合ってくれて、おふくろありがとな』ってこと。劇中でも描かれていますけど、俺がおふくろの脇腹を蹴って肋骨を骨折させた時、おふくろを溺愛するヤクザの伯父が、怒ってオレに手をだすんじゃないかと逃げまわっていた時があったんです。その時、おふくろが伯父に『コーイチに手を出したら、私が病院から飛び降りて死んでやるからっ!』って脅してくれたんです」(板谷氏)。

 だが残念ながら母親は、前作『ワルボロ』の公開を見ずに他界してしまったという。「無条件で自分を愛してくれる人の存在は大きいですよね。でも、それを実感したのは母親が亡くなってから。ワルを卒業して25歳から42歳までの17年間はライターとしてずっと文章を書いていたけど、それがなんで出来たかと言えばおふくろ見てくれよ!という思いがあったから。だから正直、亡くなってからは誰に向かって書いたらいいのか、文章を書くきが無くなってしまって。そろそろ、自分の子供のことを考えなきゃいけないのだけど、まだおふくろの事が心に遺っているんです」(板谷氏)。

 映画は、そんな板谷氏を思いをたっぷり盛り込んだマザコン・・・もとい、溢れんばかりの親子愛に満ちている。橋本一監督が言う。「僕らはワルを礼賛するのではなく、人としてどうあるべきかという生き方を描いています。教育映画を撮っているような感じですよ」。

 そう、何より板谷氏が、手荒い教育を受けた実証例みたいなもの。そして、スマホやネットなどで陰で悪口を言い合っているよりも、面と向かってどつき合っている方がよほど健全だと思うから不思議だ(もちろん暴力はアカン!絶対!)。たかがヤンキー映画と侮るなかれ。アツい男たちが作った映画には、人生で何が大切なのかを見失いがちな現代人へのメッセージがいっぱい詰まっているのだ。

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