進歩続ける食道がん、胃がんの治療 術後の合併症、AI導入でさらにミス減少へ 医師が実情語る

 先日行われた勉強会で、私が尊敬する兵庫医科大学病院の篠原尚教授に講演していただきました。多くの患者さんにとって希望が持てる内容だったので、共有させて頂きたいと思います。

 胃癌については、1985年から除菌治療、ピロリ菌の自然感染の低下により漸減し、2015年には約38%の減少を認められました。さらに2050年には約70%の減少、若年世代は概ねなくなるのではないかと推測されています。

 手術に関しては、2000年までは開腹手術が優位であったのが、腹腔鏡手術の導入、2010年以降はロボット手術の導入、内視鏡治療の適応拡大、薬物治療の大幅な進歩により、予後が大幅に改善されています。

 低侵襲手術、手術手技の向上は認めていますが、一方で高齢化、化学療法後の手術など様々な要因により、術後の合併症は増えてきています。そのような中でロボット手術が合併症の減少に寄与することが期待されています。

 合併症の6割が、術者の意思決定のミスが原因とされています。そのミスをAIにより減少させることが可能とされており、今研究が進んでいます。

 また、様々な抗がん剤の使用により手術不能、治療不能とされていたStageⅣB(ステージ4B)の患者さんに対して、2017年から2022年にかけて18.4%の患者さんに手術が施行されました。2021年11月から2023年6月には、27.8%の患者さんに対して手術が施行されています。免疫チェックポイント阻害剤を最初に使用することが可能になったことで、治療成績が大幅に改善されたと推測されます。

 食道癌の治療に関しては、術前化学療法が45%、手術のみが5%、内視鏡治療が50%となっています。約75%の患者さんに術前化学療法が奏功しています。そのうちの15%の患者さんが手術を拒否され経過観察となっているようです。兵庫医科大学病院では、外科、内科が一体となり癌治療に取り組んでいるために、すべての癌患者さんに対して外科医、 内科医が携わる形がとられています。

 今後も食道癌、胃癌の治療の発展が、多いに期待されています。

◆谷光利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

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