【謎】5月2日は八十八夜 お茶屋で海苔を売っているのはなぜ?
♪夏も近づく、八十八夜~
「茶摘み」の歌でおなじみ「八十八夜」は、立春から数えて八十八日目。今年は5月2日になり、この日に摘んだお茶は「病気にならない」「健康で長寿できる」など、縁起がいいとされています。ところで町のお茶屋では、海苔を販売しているのをよく見かけます。海産物と農産物、いったいなぜ一緒に並んでいるのでしょうか?
外国人観光客の姿が目立つ上野アメ横。訪ねたのはここで昭和21年から店を構える「茶の君野園」。東京都茶協同組合の理事長でもある、社長の君野信太郎さんが教えてくれました。
-お茶と一緒に海苔も売られていますが、なぜでしょうか?
「新茶のシーズンは4月から5月半ばまで。忙しさは6月で一段落します。一方、新海苔は11月から仕入れが始まる。一番忙しいのは12月暮れのお中元の時期。ちょうど忙しい時期がずれるため、お茶と海苔を販売するのは都合がいいんです」
-なるほど!それに海苔はお茶と保存方法も似ていそうですね。
「どちらも湿気、そして匂いを嫌う商品なので、商品を入れ替えしやすいんです。保管する際の温度が重要なことも共通です」
-とても理にかなっていますが、どこかのお店が始めたんですか?
「どこのお店が始めたというわけではなく、お茶も海苔も問屋が扱う商品。当店が始まった頃、海苔は『黒いダイヤ』と呼ばれるほど、需要が高く高値で売れました。問屋と取引している中で、自然とお茶も海苔も取り扱うようになったんです。ただ、海苔を扱うお茶屋が多いのは関東地方。関西方面では茶道とのつながりが深いので、海苔ではなく、抹茶などを売っているお茶屋が多いです」
-きょうも外国の観光客の方が多いですね。コロナ前の売り上げには戻ってきましたか?
「全体的には、ようやくコロナ前の売り上げの半分くらいかな。このコロナの影響で海苔の消費量が落ち込んでいて、さらに昨年は海苔の不作もあり、海苔の販売をやめるお茶屋も増えているんです」
-お茶と海苔が一緒に販売されている風景を見るのも今だけかもしれないんですね。
「お茶や、海苔のようにこれが日本の文化と主張できるものは少ない。文化にとって美味しさ・喜びは大事ですよね。さらに、日本の自然とぴったりくっついているのがよくわかる商品でもあります。お客さんによりよいものを提供するのはもちろん、外国にも美味しさを伝えたいですね」
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取材協力:茶の君野園
東京都台東区上野4-9-13
http://www.kiminoen.jp/index.html
(デイリースポーツ特約・遠藤萌美)
