数匹の野良猫が3年で約3000匹に繁殖!?一代限りの命を見守る地域猫「TNR活動」

 神戸市の一戸建てに住む40代女性Nさんは、駐車場から車を出そうとして、車体の下でガラスの割れる音がしたので驚いた。慌てて車外に出ると、割れた器とキャットフードが散乱していた。隣家の一人暮らしの高齢女性が以前から、数匹の野良猫を可愛がっていることは知っていたが、まさか自分の車の下で餌をやっていたとは。ただトラブルになるなら我慢したほうがましと、何も言えない。

 「隣人の敷地での給餌はマナー違反です。その猫たちは耳にV字のカットがされていますか?」と話すのは、NPO法人神戸猫ネット理事長の杉野千恵子さん。自治体と協力し、猫の繁殖抑制活動に取り組んでいる。最も重要なのは不妊去勢手術の実施。手術をせず、無責任に餌を与えると糞尿の悪臭や騒音など地域トラブルの原因になるだけでなく、繁殖連鎖を止めることが出来ない。

 猫は生後4カ月頃から成熟し、繁殖力が強く、血縁関係問わず交配。妊娠期間は2カ月で、年に3回出産が可能。1匹の雌から1年で20~30匹の子猫が生まれる。その中でさらに交配を繰り返すため、3年も経てば3000匹になることもある。

 多くの地域では過剰繁殖で保護施設が許容量を超え、殺処分されるケースが後を絶たない。さらに交通事故死は、殺処分の数を上回るという。不妊去勢手術は、猫を守るための責任ある行動であり愛情である。

 野良猫に不妊去勢手術をし、地域に返すことを「TNR活動」と呼ぶ(Trap=猫を捕まえ、Neuter=不妊去勢手術をし、Return=元の生活場所に戻す)。手術を受けた猫は、耳にV字のカットが施され識別。

 神戸猫ネットでは、自治体と協力して「地域猫」活動を推進。野良猫を殺処分から守り、地域住民との共生を目指し、TNR活動に取り組み、保護猫譲渡会も定期的に開催している。7年前に繁殖制限に特化した条例を施行した神戸市では、年間2000匹の野良猫の不妊去勢手術が行われ、殺処分も減少した。もし神戸市で耳にV字カットされていない野良猫を目撃した場合、「神戸市人と猫との共生推進協議会」に連絡すれば、不妊去勢手術の費用を全額助成してくれる。また全国の自治体でも不妊去勢手術費用の一部が補助される場合もあるので確認を。

 杉野さんは語る。

「飼い猫が複数子を産むと、捨ててしまい、野良猫となることもある。我々の役割は、地域住民と猫の共生のためにTNR活動を広く知ってもらうこと。一代限りの命を大切に、地域の皆さんに可愛がって欲しい。猫とは最後まで一緒に暮らしていくと責任を持つこと。家の中で飼われた猫は、縄張りがある野外環境では生きていけない。どうか飼い猫は家族だという気持ちを忘れないで」

 熱い思いが胸に響く。

 (デイリースポーツ特約・市来島姫)

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