流血した高齢者を救助したら感染者だった!血を浴びた私も!?知っておきたい感染対策

転倒した高齢女性 ※写真はイメージです(Anatta_Tan/stock.adobe.com)
訪問看護ステーション管理・宮里拳吾さん
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 駅構内の上りエスカレーターに乗っていた40代主婦A子さん。

 突然、杖をついた男性が転倒。将棋倒しで高齢女性も後向きに倒れてきた。後ろに立っていたA子さんは、流血した高齢女性の頭をすぐさま抱えあげ、救助の手助けをした。

 救急隊員を見送り、トイレに向かったA子さんは、高齢女性の血が全身に付着した自分を鏡で見て青ざめた。血まみれ姿に女子トイレ内は騒然となった。バッグの中にも血液が飛び散っており、逆さにして中の全てを洗ったが、すべてを流しきることはできなかった。A子さんは駅長室に立ち寄り、事の経緯を説明。名前や電話番号などを記し、駅でもらった黒いビニール袋に血液が付着したバッグや衣服を詰め帰宅したが、震えが止まらなかった。

 帰宅後シャワーを浴び、部屋の中でうずくまった。小学生の子どもたちが学校から帰宅し、A子さんの様子を心配して夫に連絡。帰宅した夫が夕飯を準備しながら子どもたちを安心させ、A子さんもようやく落ち着きを取り戻し布団に入ろうとした22時頃、電話が鳴った。救急隊員からだった。

 負傷して運ばれた女性がC型肝炎に感染しており、現在治療中と判明。至急、1時間離れた病院まで血液検査に来て欲しいとのこと。再びA子さんに不安や恐怖が押し寄せてきた。

 「翌朝は、楽しみにしていた息子の小学校の合唱コンクール。いったい私が何をしたというのか…」

 病院から帰宅したのは深夜。感染の疑いが晴れるまで、半年間毎月、検査に来るよう医師に告げられた。生きた心地がしない日々。絶望の淵に立たされながら、A子さんはビニール手袋をつけ、毎日食事の準備をしたという。

 半年後、結果は陰性。久しぶりに心から笑うことができた。

 A子さんはいう。「血まみれになっても誰も助けてはくれず、一人で電車に乗って帰った。それから半年間不安でいっぱいの日々が続いた。知識もなく人を救護したことで家族が不安と戦う毎日。自分を責めて後悔した。今は友人知人に救急講習を勧めている」

 日常的に高齢者と関わり、転倒や意識不明などの処置に対し経験が豊富な看護師で、訪問看護ステーション管理者の宮里拳吾さんに、負傷者救助の際の心得について聞いてみた。

 宮里さんは、急性期病棟にいた頃、2日に一回の頻度で転倒の現場に遭遇していたという。

 「実はつい最近、自宅近くで人が転倒し、頭から出血して痙攣しているのを目撃しました。仕事では冷静に対応していますが、実際に遭遇すると焦るもの。無我夢中になり、自分を守ることを疎かにしがちですが、血液、嘔吐物には触れないように気をつけることが大事です。大声で呼び掛け、周囲に知らせ、119番に通報しましょう。GPS機能がONになっていない場合は、現地の場所を冷静に正確に伝えましょう。血液に触れないよう、コンビニのビニール袋を手に装着したり、衣服を脱いだり、タオルを活用し、負傷者の血液や嘔吐物を直に触れないようにします。防災ポーチに、使い捨てビニール手袋を入れておくのも安心です。もしも触れてしまった場合は、必ず石鹸と流水で手と顔を十分洗いましょう。指に傷がある場合は、念のため医療機関を受診するのが安心です」

 一刻を争う応急手当、大切な誰かの命だけでなく、自分自身の身を守るためにも正しい知識を持つことが重要です。

 (デイリースポーツ特約・せと麻紗子)

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