20年ぶりの新札発行!最新技術で模倣困難 自販機、券売機等の更新で新500円玉もどこでもOK?
2024年7月3日の新しいお札の発行まであと3週間と、目前に迫ってきました。2004年の小泉内閣以来、20年ぶりとなります。今回の新1万円札は福沢諭吉から、日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一に。新5000円札は樋口一葉から、女子高等教育の発展に力を尽くした津田梅子へ、新1000円札は野口英世から、ペスト菌を発見し医学の進歩に貢献した北里柴三郎へと変わります。
新しいお札のデザインは、財務省・日本銀行・国立印刷局の協議の元、最終的に財務大臣によって決定されます。国立印刷局には、デザインや彫刻を行う工芸官という専門職員がおり、筆や色鉛筆を使用し、お札のもとになる絵(原図)を描きます。それをもとに、肖像については、彫刻担当の工芸官が、金属の板に特殊な彫刻刀を使い、手で彫刻して原版を作製します。お札の背景の細かい模様や彩紋と呼ばれる幾何学模様は、最新のコンピュータシステムでデザインされており、最終的に彫刻画線と融合することで、お札のデザインが完成となります。
日本は世界に類をみない現金大国といわれますが、クレジットカードやQRコードを使用したキャッシュレス決済が広がっている今、なぜお札を刷新するのでしょうか?
理由の一つは「偽造防止」。日本銀行が初めてお札を発行したのは1885年。これまで53種類も発行されていますが(現在22種類が有効)、警察庁の統計では、2023年12月末までに681枚の偽札が見つかっているといいます。そのうち85.6%が一万円札。カラープリンターで印刷した一万円札をタクシーやコンビニで使用し、偽造通貨行使罪で逮捕されたケースも。
最近は、対面行使が可能であるほど外観が本物らしいものや、偽造防止技術のホログラム(光の波長などを記録しており、傾ける角度で色や画像が変化する。お札やパスポートなど高い信頼性が必要なものにつけられる)を模したものが付いたものがありますが、パソコン、スキャナ、プリンター等の高性能化が進み、精巧な偽造を容易に行えるようになったため、最新の技術を導入したそうです。
新しいお札には、光に透かして模様を浮かび上がらせる「すかし」以外にも、「深凹版印刷」という、インキが盛り上がる印刷方式を使用。触るとザラザラする識別マークなど、目の不自由な方にも識別しやすいようなデザインが施されています。
現在のお札の識別マークは、例えば5000円札なら八角形、1000円札は横棒というように、金額により形が異なっていますが、新しいお札は全て11本の斜線に揃え、金額ごとに位置を変えて識別しやすくしています。お札の左上及び右下に印刷されているアルファベットと数字は、記番号と呼ばれ、新しいお札では現在の9桁から10桁に増えています。
また、現在のお札より額面数字が大きく印刷されていて、年齢や国籍を問わず使いやすいデザインを目指したものとなっています。3券種の色味も、新1万円札が茶系、新5000円札は紫系、新1000円札は青系と異なっており、紫外線で表面の日本銀行総裁の印章や表裏面の模様の一部が発光します。
お札を傾けて見ると左右両端の中央部にピンクの光沢が浮かび上がります。コピー機での再現が困難である微小なマイクロ文字も特徴です。
新しいお札で新たに導入される最新技術はふたつ。まず「高精細すき入れ(すかし)」。肖像の周囲に細かな連続模様が施され、偽造がさらに困難となります。もう一つは、見る角度で肖像が回転する3Dホログラム。銀行券では世界初導入となる新技術で、高度な技術を模倣するのは難易度が極めて高いそうです。上下に長いストライプ型のホログラムが、新1万円札と新5000円札、四角形のパッチ型が新1000円札に施されます。
新しいお札が発行されても「法令に基づく特別な措置」が発令されない限り、旧札は引き続き使用できます。旧札を新札に交換する場合は、銀行で両替依頼書に必要事項を記入し、窓口に提出します。手数料や両替可能な枚数は、銀行によって異なるため、事前に確認が必要です。
ところで、2021年11月から流通が開始されている新500円玉。一部の自動販売機で使用できず、非常に使いづらさを感じたことはないでしょうか?利用が制限された自販機は、新500円玉を認識する硬貨選別装置センサーの更新が必要なのだそうです。しかし、7月の新しいお札の発行に伴い、自動販売機や精算機、券売機、ATMなどのソフトウェアが更新されていくことが見込まれます。いよいよ7月から、お手持ちの新500円玉をストレスなく自動販売機で利用することができるようになりそうです。
(デイリースポーツ特約・せと麻沙子)