相続した“負動産”放置すると固定資産税が6倍に!?2027年末までに売却したほうがいい理由とは

負動産 ※写真はイメージです(BBuilder/stock.adobe.com)
冨岡秀樹税理士
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 関東在住の50代会社員Sさんは、兵庫県にある実家の処分について悩んでいる。母親の一周忌が終わる前に実家の査定を依頼したいのだが、親戚からは「早すぎる」とか「本家は残してほしい」との声が上がり、頭を抱えているという。

 総務省によると、2023年10月時点での日本の空き家率は13.8%と過去最高を記録。さらに、5年ごとに行われる調査では、空き家数が過去5年間で51万戸増え、900万戸に達し過去最多となっている。

 「リスクを避けるためには早めの対策が必要です」と助言するのは、税理士法人阪神税務総合事務所代表の冨岡秀樹さん。親が残した家の処分に困っているという相談は多く、売却に関して兄弟間での考え方の相違に苦しむ人も少なくないという。

空き家を放置するとまず固定資産税がかかる。さらに、管理が不十分だと景観を損ない、保安上危険となる場合もあり、「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定される。2015年に施行された空き家法では、地域住民の生活を保全するため「特定空き家」という区分が設けられたが、2023年12月からは「管理不全空き家」の区分も設けられ、空き家状態が3段階に分けられた。これらに指定されると、「住宅用地の特例」が適用外となり、固定資産税が翌年から最大6倍に引き上げられてしまう。

 固定資産税が6倍になる例としては、以下のようなケースがある。

 ①特定空き家や管理不全空き家に指定された場合

 ②住宅を取り壊して更地にした場合

 ③住宅のあった場所を駐車場にした場合

 ④空き家を住宅以外の用途に使用した場合

 空き家を維持管理していても、居住用の建物として使っていなければ『住宅用地特例』の対象外になるので注意が必要だ。

 -2027年末までに売却したほうがいいと聞いたのですが?

 「相続した土地を売却して利益(譲渡所得)が出たら、『譲渡所得税』が発生しますが、相続空き家の3000万円特別控除が利用できる場合があります。この特別控除には売却の期限があるので、注意が必要です。相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した空き家に限られており、特別控除が利用できる空き家の売却は、2027年末までとされています」

 -特別控除が利用できる空き家とは?

 「以下、3つの要件すべてに当てはまるものとなります

 ①昭和56年5月31日以前に建築されていること

 ②マンションではなく一軒家であること。

 ③相続開始の直前において被相続人が一人暮らしであったこと。

現行制度では、譲渡前に耐震改修工事や建物の取り壊しをする必要がありましたが、2024年1月以降に行う譲渡については、譲渡日の属する年の翌年2月15日までの間に、耐震改修や取り壊しをすれば特例を適用することができるようになります」

 マンションを含め、課税される遺産総額が基礎控除額を超えるなら、相続税の申告と納税が必要となる。期限は財産の持ち主が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内。相続財産の評価や相続税の計算には時間がかかり、財産調査や相続人の捜索、遺言書の確認などが必要となるため、「子供さんが独立されたタイミングで、自分の意思を明確にしておく遺言書を作製しておくと安心」と冨岡さん。家の売却がスムーズにいかない場合は、親族に住んでもらうのも空き家問題解決の一つの方法だと言う。換気や排水、庭の手入れなどの維持管理も住居の健全性を保つことができる。

 大切な人々が安心して暮らせる未来を築くために、考えや意向を残せる有益なツールを活用しながら、元気なうちに準備を始めることをお勧めしたい。 

 (デイリースポーツ特約・せと麻沙子)

税理士法人 阪神税務総合事務所

有限会社ウェルス・マネージメント

代表税理士 冨岡秀樹氏

「夙川相続サポートオフィス」HPのコラム「相続はじめの第一歩」

https://e-souzoku-nishinomiya.com/news/

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