俳優って何だろう?名優の素顔語ります

 女優で作家の高橋洋子が今春から再始動した。そのタイミングでの連載コラムをお届けする。“女優作家”が昭和を彩った俳優や文化人との交流を通し、鋭い観察眼でその素顔を語る。

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 今年3月に28年ぶりとなる映画の撮影で山口県に行ってきました。「八重子のハミング」という作品で、私は認知症で介護される八重子という役。夫役は升毅さんです。4月下旬には13年ぶりに「のっぴき庵」(講談社)という小説を出しました。のっぴきならなくなった俳優同士が集まる老人ホームが舞台です。

 時々、俳優さんの楽屋見舞いをすると、みんな不景気な話をなさるんです。今、俳優業が大変だと。かつて活躍した人が羽を伸ばせない状況になっていると。そういう俳優さんはどう暮らしていけばいいのか、俳優って何だろう、俳優って世の中に属しているようで属していないんじゃないか。そんな思いが交錯して書きました。

 私と同世代で若い時から現在までテレビの主役を継続している俳優って「相棒」の水谷豊さんのように、ごく限られた方だけです。逆に40~50代から世に出てきた人は強いですよ。映画で共演させていただいた升さんも関西の劇団や深夜番組で人気を得てから東京に来られた。古田新太さんもそうですよね。

 雑誌で対談した田中健ちゃんは「みんなご破算ってことだね」と言うんです。健ちゃんと私の共通項は若い時にいい役に恵まれ過ぎて下積みがないこと。彼は「青春の門」、私は「旅の重さ」でいきなり映画の主役。若い時に打ち上げ花火です。テレビだと健ちゃんは「俺たちの旅」で、私は平均視聴率が46・1%(※ビデオリサーチ調べ、関東地区=NHK朝ドラ歴代5位)もあった「北の家族」。あの頃は日本人も穏やかで、ヘタな子がどう成長するか1年間(※当時のNHK朝ドラ放送期間は1年)見守ってくださいました。

 だからこそ、よかったこともあります。それは自分が若い時に名優の方々を相手にいい役を頂き、オフの時も交流させて頂いたことです。次回から、そのエピソードの数々をご紹介させて頂きます。

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 高橋洋子(たかはし・ようこ)1953年生まれ、東京都出身。72年、映画「旅の重さ」で主演デビュー。73年にNHK連続テレビ小説「北の家族」のヒロインを務め、映画「サンダカン八番娼館 望郷」(74年)など数々の名作に出演。81年に小説「雨が好き」で中央公論新人賞を受賞し、82年に「通りゃんせ」が芥川賞候補に。女優と作家の“二刀流”を確立した。

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