ケイバ熱盛ブログ「父アロゲートに思う…」(10月13日)

 栗東・井上です。しびれました。9日の阪神6R。新馬戦です。外国産馬ジャスパーグレイトが2着馬に10馬身の差をつけて圧勝しました。このレースの本紙予想担当だったワタクシは迷わず◎に。攻め時計の良さも理由のひとつですが、ひかれたのはあのアロゲートが父という血統背景です。1番人気だろうと思っていましたが、3番人気の単勝700円にはびっくりしました。

 “あの”と表現したのは、ワタクシにとってアロゲートの存在が偉大かつ特別だからです。重賞初挑戦でG1制覇となった16年トラヴァーズSでは13馬身半差の圧勝を演じ、トラックレコードを記録。続く16年BCクラシックでは当時世界No.1レーティングのカリフォルニアクロームを負かしての勝利。さらに17年ペガサスワールドCもトラックレコードを飾りG1・3勝を含む6連勝と、まさに無双でした。

 アロゲートが7連勝を狙ったのが17年ドバイワールドC。日本からはアウォーディー、ラニ、アポロケンタッキー、ゴールドドリームが参戦し、ワタクシもドバイへ発ち、現地で取材しました。出国前には下調べのため、アロゲートのG1・3連勝を動画で何度も確認。アロゲート陣営を取材できることに、ワクワクして現地へ乗りこみました。一般的に見栄えのしないとされる芦毛馬だが、胸前のゴツイ筋肉とパンパンに張ったトモが印象的だったのを覚えています。

 当時の取材ノートを引っ張り出してきました。「闘争心があって走るのが好きなリアルチャンピオン」と自信満々に語ったのは、09年に米競馬の殿堂入りしたボブ・バファート調教師。日本馬アポロケンタッキーに騎乗するルメールも「相手が2完歩で走る距離をアロゲートは1完歩で走る。フライだよ」とレース前から1強ムードでした。

 レース前日、メイダン競馬場で行われた昼食会で03年に米競馬の殿堂入りをしたマイク・スミスの取材に成功しました。G1・9勝馬アゼリ、G1・11勝馬ゼニヤッタなど、多くの歴史的名馬の主戦を務めたスーパージョッキーはコンビを組むアロゲートについてこう語りました。「ビッグストライドなのに加速が速い。この馬がボクのキャリアをもうひとつ上げてくれるだろう」。その強さを間近で見られる。記者冥利に尽きるとはまさにこのことです。

 当日は前日からの豪雨によって水の浮いた馬場状態。さらに、レースはスタート直後に両サイドから挟まれて後方から2番手と苦しい展開。それでも、世界最強馬にとってはハンデのようなもの。大きな完歩でうなるようにひとまくり。残り300メートルで先頭に発ち、最後は手綱をおさえた余裕の勝ちっぷりにあぜんとするしかなかった。

 アロゲートは昨年、病気のため急死しました。7歳でした。世界的にも貴重な血統ですが、日本で走る産駒はさらに希少。現在JRAの登録馬は7頭のみで初年度産駒のジャスパーグレイトにかかる期待は大きい。早速、BCジュベナイル(11月5日・米デルマー)の挑戦が発表されましたが、可能性は広がるばかり。大きなフットワークは父アロゲート譲り。体質が弱くて米3冠とは無縁だった父の遺志を継ぎ、ぜひ夢の舞台へと挑戦してもらいたいものです。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

ケイバ熱盛ブログ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(ケイバ熱盛ブログ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス