「中之島図書館」から「日本館」まで設計した事務所へ『イケフェス大阪』アフター万博企画も
大阪で、今も使われている「生きた建築」を公開する、日本最大級の建築イベント『生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)2025』が、10月25日と26日に開催された。今年用意されたプログラムは、なんと合計203件。
SNSには「充実の内容でした」「普段非公開の場所を見ることができて眼福」「また来年も参加する!」などと、貴重な機会を満喫した参加者たちからの投稿が多数。今年も大盛況だったようだ。
◆ なかなか入る機会がない「大手設計事務所」を訪れてみると…?
そんな『イケフェス大阪』では、レトロ建築や近代建築を見学できるイベント、というイメージが強いのだが、実はそれ以外の建築関連企画も多数開催されていて、建築には欠かせない設計業務をおこなう設計事務所も、特別に事務所を公開している。今回は、多くの有名建築物を設計している「日建設計」大阪オフィス(大阪市中央区)をレポートする。
事務所が入居する御堂筋に面したビル「銀泉備後町ビル」は、もちろん同社の設計。なかなか入る機会がない大手設計事務所にドキドキしながら入場すると、展示を企画した取締役・常務執行役員・大阪オフィス代表の勝山太郎さん、設計審査グループの多喜茂さん、テックデザイングループの畑貴良志さんが、にこやかに迎えてくれて特別に中を案内してくれた。
◆「中之島図書館」「東京タワー」「神戸ポートタワー」…「みてもらいたい展示がふくらみすぎて」
『イケフェス大阪』への同社の参加は10年目だが、同ビルでの展示は3回目。「みてもらいたい展示がふくらんでしまい、今年はとうとう事務所として使用する4フロアすべてで展示をおこなうことになった」と笑うほど、盛りだくさんな展示だ。
今年、同社は創業125周年になることから、テーマは「日建設計」の『時代を彩った建築 その設計図から技術_デザインの変遷を巡る』とした。「『イケフェス大阪』は開かれたイベントなので、設計事務所の内側というか、我々がどんなことを考えて設計をおこなっているかを、成果品である設計図を公開することで、設計の仕事をあまりご存知ない方にも、親近感や関心を持っていただきたいと考えました」と、勝山さん。
設計図は、1907年の同社最初の設計「大阪府立中之島図書館」(大阪市北区)から、最近の仕事まで、東西や新旧対決のように並べて紹介。特に手書きの図面は、細かさとレイアウトの美しさに釘付けになっている人が多数。設計図をあまり見たことがない人も、アートのような美しさに驚くだろう。
現在はCAD(コンピュータの設計支援ソフト)で図面を作成するが、30年前くらいまでは手書きだった。「東京タワー」(東京都港区)や「神戸ポートタワー」(神戸市中央区)などの美しいカーブの線、図面の配置も必見だ。
ほかに、今年、日本建築学賞を受賞した「高槻城公園芸術文化劇場」(高槻市)の設計プロセスがわかる資料や全図面、最新技術による解析映像も紹介。
◆『大阪・関西万博』の裏側、そして「アフター万博」なスタンプラリー爆誕
同社は、『大阪・関西万博』の会場内で、日本館、住友館、ガスパビリオン、静けさの森、電力館、迎賓館などのほか、背もたれがついた竹のベンチなど、多数の設計を担当している。今回は、ゲーム感覚で、同社が関わったパビリオンなどを歩いて巡れる最新のデジタル技術「3DGS」の体験も用意されていた。
「万博は半年と期間も限定されていて、ここに展示している建物のように残るものではないのがポイントで、いろいろな可能性を試すことができました。材料のリサイクル、リユースは万博ならでは。そういうところにトライして成果も生み出せたかなと思っています。これからはサーキュラーデザイン(設計段階から廃棄物を少なくするデザイン)を考える時代になると思うので、それを進める良い機会になりました。閉幕したから終わりではなく、未来にどう繋げていくかを考えなくてはいけないと思っています」と、勝山さんはこれからの展開について想いを語った。
『イケフェス大阪』では、「日建設計」のほか、13の設計事務所が参加する「セッケイ・ロード」も開催。共通企画展『未来へ繋げたい、世界のあれこれ』で各事務所をまわると、万博会場が完成するという、ユニークで今年らしい「スタンプラリー」企画もおこなわれた。
2026年の『イケフェス大阪』は、10月24日と25日に開催することが決定している。来年はどのような企画が飛び出すか、今から楽しみだ。
取材・文・写真/太田浩子
(Lmaga.jp)
