宝塚退団20周年公演で「もう一度会いたかった役」に再び挑む湖月わたる、演出の荻田浩一とは「社会人の幼馴染」で「永遠の仲間」

宝塚歌劇団在籍時に、それぞれ初主演作・演出家デビュー作となった『夜明けの天使たち』(1997年)などでタッグ。退団後もプライベートで仲間たちと食事をし、舞台でも関わるなど、交流を深めてきた元星組トップスターの湖月わたると、演出家の荻田浩一。対談記事第1弾では、懐かしい宝塚の話で盛り上がったふたりが、新たに11月に届ける 湖月わたる 宝塚歌劇団退団20th Anniversary『TUMBLEWEED(タンブルウィード)』について、たっぷり語り合った。

取材・文/小野寺亜紀

■ 声優や俳優として活躍する朴璐美さん、元雪組男役スター・彩凪 翔さんと共演--湖月さんが2008年、2012年に『カラミティ・ジェーン』で演じられた伝説の女性ガンマンの物語を、新たに朗読・歌・ダンスによって見せていく舞台。11月の公演ですが、現時点での構想をお聞かせください。

荻田「僕は『カラミティ・ジェーン』を2回とも拝見していて、わたるのとても印象的な役でした。今回退団20周年という節目の公演であり、退団後エポックになったというこの作品をベースに、「半朗読劇」にしてみようと思いました。なぜそういうスタイルなのかというと、まず朴 ?美(ぱくろみ)さん(俳優で『進撃の巨人』ハンジ・ゾエ役、『NANA』大崎ナナ役などの声優としても知られる)が出演をご快諾くださったんだよね」

湖月「はい。朴さんとは2018年に『「蜜蜂と遠雷」リーディング・オーケストラコンサート~コトダマの音楽会~』でご一緒し、私は朴さんと朗読を担当させていただきました。そのとき、リハーサルで朴さんがひと言発したときに、声の存在感に打ちのめされて! 声の表現のプロの方とご一緒するのは初めてだったのですが、すごい!と衝撃を受けました。その後しばらくご縁はなかったのですが、昨年、朴さんが演出をされた『平家物語 -胡蝶の被斬-』と、体感型朗読劇 神楽坂怪奇譚 二〇二五『棲』に、出演させていただきました」

荻田「僕は朴さんとは初めてです。朴さんは声を使うことが本業でもいらっしゃるので、その強みを生かせる形がいいなと。そこで、朴さんにはナレーター的なポジションで入っていただきつつ、わたると、もうひとりの出演者である彩凪 翔さんが、芝居的な絡みを見せる構成にし、ときどき朴さんとの掛け合いも入れていくような、少し変わった朗読劇にできたらいいなと思いました」

湖月「うれしいです!」

荻田「朴さんのお名前はわたるが出してくれたんだけど、プライベートな記念公演に出てくれるのか?と最初は思いました。とりあえず声をかけてみよう、となったんだよね」

湖月「そう、本当にありがたいです。お力をお借りして、朴さんと新たな世界を作り上げていけたらと思っています」

荻田「芝居だけにならない、ちょっと変わった朗読劇の形にできれば。やはりお客様は、わたるがずっと続けている歌や踊りもご覧になりたいはず。今のところ一幕もので、前半の3分の2がカラミティ・ジェーンの物語、残り3分の1がショーというイメージです」

■ 「また一緒に踊れたらいいね」退団後の『ベルサイユのばら50』の縁--彩凪 翔さんとは2024年の『ベルサイユのばら50』が初共演でしょうか。

湖月「はい。フィナーレナンバーのデュエットダンス、ボレロで彼女が女性のパート、私が男性のパートを踊らせてもらいました。彼女は2006年が初舞台で、私はその年に退団しているので、ちょうどすれ違いなんです。もちろんボレロを手掛けられた喜多 弘先生(振付家)とはお会いになっていないですし、初めてこの有名な振付を踊るということで、とても緊張していたと思います。

でも稽古場で初めて一緒に踊った瞬間に、「すごい! この振付を理解し、何度も何度も練習して、私との合わせに臨んでくれたんだ」とわかりました。千秋楽に「また一緒に踊れたらいいね」とお別れしたので、それが今回かない、とてもうれしいです」

荻田「周年公演は普通、仲間内で固まることも多いじゃないですか。でも「退団20周年」と銘打っているからには、退団後に出会った方や何かを織り込まないと、意味がないのではと思って。彩凪さんが退団後にわたるが出会った宝塚OGということです。さらに現役時代からご縁のある人には、スペシャルゲストとして出演してもらう予定です」

■「不器用だけれど必死に生きるジェーンが愛おしくなった」--そのゲストは今後発表になるとのことで楽しみです。湖月さんはカラミティ・ジェーンを以前にも演じられましたが、彼女のどのようなところに興味を抱きましたか。

湖月「彼女はガンマンの全盛期にビルという男性と出会って結婚。いわゆるミュージカルのカラミティ・ジェーンはそのハッピーエンドで終わるのですが、私が出演したフランスの戯曲が元になっている舞台では、その後、亡くなるまでの人生が描かれていました。最初に演じたときは退団して2年目だったので、女性の一生を演じ切れるのか、という不安と戦いながら挑んだ作品でした」

荻田「そうだったんだ」

湖月「音楽劇でしたがお芝居がメインでもあって。でもすごく好評をいただき、4年後に再演がかないました。そのときは、ジェーンの不器用だけれど必死に生きている姿がどんどん愛おしくなり、「いつかもう一度会いたい」と思うようになりました。その願いを、おぎちゃん(荻田)がかなえてくださることになり、本当にうれしいです」

荻田「また新しく脚本を書くので、もしかしたら全然違うものになるかもしれないけど(笑)」

湖月「そのまま演じるというよりは、新しい形にしたいという思いもあったんですよ。やっぱり長く付き合っていきたい役でもあるので、この半朗読劇という今回の舞台が、終わりではなく、始まりになるかもしれない。ここからまた、新しいカラミティ・ジェーンが誕生するのではと思っています!」

荻田「男装の女性ガンマンとして興行スターになったカラミティ・ジェーンだけど、舞台で拝見したときに、どちらかというとこれは「母」の物語だなと感じたんですよ」

湖月「うんうん」

荻田「娘を持つ母としての苦悩とか、不器用な女性の生き様の話だなと。ガンマンとしてのかっこよさももちろんあるのですが、それ以上にひとりの女性の物語だと思ったので、今のキャリアのわたるでそれを見てみたいな、というのはありました」

湖月「あのときは、ガンマンショーみたいな華やかな場面も多くて、大勢で作っていた作品でした。当時はまだ演じ切れなかった彼女の人生と、もう一度しっかり向き合いたいという思いがあり、今回の朗読という形は、まさに自分が求めていたものだなと感じています」

■『マイ フレンド ジキル』での発見を経て、振付に挑戦--ショーのほうも含め、これから本格的な創作が始まっていくのかと思うのですが、湖月さんご自身にとって、何か新たな挑戦はありますか。

湖月「今回、何曲か振付を担当させていただくことになりました。昨年『マイ フレンド ジキル』で、ロンドンで活躍されている益井悠紀子さんの振付を初めて踊ったのですが、振りをいただくたびに役が立体的になり、踊り込むほどに感情とシンクロしていくような感覚があって、とても感銘を受けたんです」

--語りと踊りをミックスした『マイ フレンド ジキル』では、コンテンポラリーダンスの要素がある踊りを、役としてドラマティックに踊られていましたね。

湖月「ぜひ益井さんに直接指導を仰ぎたいと思い、本作のお稽古に入る前に、短期間ですがロンドンに伺い、いろいろ学ばせていただきます。その経験を生かして今回の振付に挑むのは、私にとって大きな挑戦です」

■「お互い変わっていない」安心感--退団後、湖月さんと荻田さんは「ダンスミュージカル 『絹の靴下-Silk Stockings-』(2010年)や、宝塚OG公演『DREAM,A DREAM』(2013年)でもご一緒されましたが、当時を振り返るといかがですか。

荻田「僕はよく、宝塚の同じ時代を生きたOGの方とお仕事する機会があるのですが、何も変わってない…」

湖月「そう、何も変わってないんですよ! おぎちゃんのこだわる部分がやっぱりあって、私はそれを習得したいと思っていました。自分の役に関するところは必死だったのですが、別の方の演出をおぎちゃんがしているときに、「やっぱりおぎちゃんだ!」と思う瞬間がいっぱいありましたね」

荻田「(笑)」

湖月「その人の良さと作品を丁寧にすり合わせながら作っていかれる姿が、やっぱり素敵だなーと思って見てました」

荻田「「変わらない」と言うと、アップデートしてないと思われるかもしれないけど、お互い退団後、環境も関わる人たちも変わっている。そのなかで、不器用ながら宝塚以外の場所に適応しつつ、根本は変わってないという感じですね(笑)」

湖月「安心感がありました」

荻田「宝塚のままではいけないけど、別に宝塚時代を否定するつもりはないし。もともとある、宝塚で培った良さに、いろいろなものを足していけばいいのではないかな、と思います」

湖月「そうですね」

■ トップスターを近くで見つめてきたからこその荻田流観点--荻田さんが今後の湖月さんに期待されていること、見てみたい作品や役はありますか?

荻田「なんだろうな~、大家族ものの長老、族長みたいなのを見てみたい。男役のトップスターさんは自己犠牲的な魅力、側面があると思っていて。ひとりで背負わなきゃいけないものがあるから、みんな毅然とした魅力があるので、大家族の大河ドラマみたいなのが見てみたいですね」

湖月「大家族ものの族長!」

荻田「『8月の家族たち』とかね。僕の演出家デビュー作で、わたるの初主演となった『夜明けの天使たち』が、西部劇のガンマンの物語だったのは、やっぱりわたるにはパーンとした明るさもあるけど、どこか孤独な部分も持ち合わせていて、それが魅力だと思ったから。耐えて耐えて生き延びる、みたいなのも似合うと思う」

湖月「あー、なるほど」

荻田「重厚な歴史ドラマとかね」

湖月「いいですね!」

--先ほど湖月さんは「これが始まりになるかもしれない」と仰っていましたが、今後も荻田さんと作品を作っていけたらという思いがありますか?

湖月「はい! ご縁が続いていけばいいなと思います」

荻田「お仕事の分野で、若かりし20代の頃にずっと一緒にいた人たちを、「社会人としての幼馴染」という言い方で僕は呼ぶんですよ。いろんなことを抜きにして、永遠の仲間なのでね」

湖月「そう、永遠の仲間です!」

荻田「それがたまに、仕事として実を結ぶといいよね。今回、わたるの退団20周年という晴れがましい舞台でご一緒できるのは、すごくうれしいしありがたいこと。心配はないし安心はしているけど、安心だけじゃダメだから、お互い奮起して頑張りましょう!」

湖月「頑張ります!」

◇ ◇

荻田浩一が構成・演出をする、湖月わたる 宝塚歌劇団退団20th Anniversary『TUMBLEWEED(タンブルウィード)』は、2026年11月に、「宝塚バウホール」(兵庫県宝塚市)、「よみうり大手町ホール」(東京都千代田区)、「御園座」(愛知県名古屋市)で上演される。日程などの詳細は後日発表。

(Lmaga.jp)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

関西最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス