【スポーツ】J1神戸サンペールから「希望受け取った」1型糖尿病と闘う女性監督

 糖尿病と闘う女性監督がいる。今年から早大ア式蹴球部女子部で監督を務める福田あやさん(34)は、10歳の時に1型糖尿病と診断された。

 「突然体調が悪くなって、自家中毒も起こして何も食べられなくなりました」。入院時に体重は16キロ台まで落ち、血圧は最高60台、最低30台と生死に関わるような状態だったという。サッカーなど様々なスポーツに親しむ活発な少女だった福田さんの人生は一変した。それでもサッカーだけは諦めなかった。「他の習い事などは全部やめたのですが、自分の中にサッカーだけは続けるという意思があった」。

 糖尿病を抱えながらの競技継続は決して容易ではなかった。脱水症状を引き起こしやすく、何度か家やグラウンドで倒れたこともあった。食前や空腹時の運動は低血糖のリスクを伴うため、試合前の食事摂取など血糖値のコントロールには細心の注意を払った。「病気を理由にしたくない」と数々の苦難にも立ち向かい続けた。

 早大を卒業するまでサッカーに打ち込み、2年時には創部初となる全日本大学女子選手権優勝を経験した。卒業後、広告制作会社に入社し、その後指導者の道に転じた。ノジマステラ神奈川相模原コーチなどを歴任し、JFA公認A級ライセンスも取得。自他共に認める明るい性格と周囲の支えによって現在に至っているという。

 1型糖尿病は現代の医学では根治できない。福田さんは今も病と闘い続けている。そんな時、J1神戸のMFセルジ・サンペール(25)が同じ1型糖尿病を抱えていることを知った。自身の人生を重ね合わせ「ものすごい希望を受け取った」という。「糖尿病を患っている方々に勇気や希望を与えたい。共に闘いたい」というサンペールの言葉に触れ、深く共鳴した。

 「私は立場も全然違うし、影響力も雲泥の差だと思います。それでも、病気のせいで夢や希望に蓋をしてしまっている人に、自分なりに夢中になれるものがきっとどこかにあるはずだし、希望に繋がるような人に出会えるはずと伝えたい。(サンペールの)共に闘おう、共に夢を見つけようというメッセージに、私も一緒に何かできることがあればうれしいなという思いです」

 昨年、病気が悪化し、一時入院を余儀なくされたことを契機にアスリートのキャリア支援などを行う「合同会社Wetanz(ウィタンジー)」を設立した。「スポーツの価値創出や社会とアスリートが融合できるような世界にしたい。そういう活動を地道ながら何かできないかなと考えました」。

 身体とも相談し、サッカーから少し距離を置き、新たな道に踏み出そうとした矢先だった。早大から監督就任のオファーが届いた。思い返せば人生の岐路で「サッカーに呼ばれている、連れ戻されている感じがしています」。1型糖尿病と診断された10歳の時も、多くを諦めざるを得なかったが「サッカーだけが自分の中に残った」。

 糖尿病患者として、サッカー指導者として挑戦を続けてきたが、今は経営者としての顔も合わせ持つ。病気を理由に人生の歩みを止めることはない。「自分の活動をもって、何かを届けられればいいかなと思っています」。(デイリースポーツ・山本直弘)

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