【野球】あなた好みの個性派審判員は?目を引くパフォーマンス、その裏には地道な修練

見逃し三振の時に、片足を上げて両手でガッツポーズのようなアクションをする市川審判
よく通る声でコールする村山太朗審判員=5日、浦添(撮影・金田祐二)
ブルペンで高々とストライクのコールをする西本欣司審判(撮影・立川洋一郎)
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 プロ野球の審判員が試合で見せる独自のアクションはファンの間でたびたび話題となっている。そうした個性はどういう経緯で生まれたのか。SNSなどで注目されている西本欣司審判員(54)、市川貴之審判員(40)、村山太朗審判員(37)の3人に話を聞いた。

   ◇  ◇

 塁上のクロスプレー、投手の渾身(こんしん)の1球。一瞬の静寂を経て緊迫の瞬間に彩りを加える要素が審判員のジャッジだ。敷田直人審判員が見逃し三振時に見せる「卍ポーズ」は有名。だがファンの間で話題のアクションを行う審判員は、まだ数多くいる。

 まずは球場中に響きわたる高音ボイスが特長の村山審判員。そのこだわりも独特だ。今の発声にたどり着くきっかけは、友人のオペラ歌手の助言だった。

 「『プロでも自分の高さ(音域)以外は出せない。自分の高さを見つけることだ』と言われ、一番声が出る高さはどの辺だろうと思ってやっていました」

 キャンプ中は通常より大音量のコールで、あえてのどをつぶす。回復すると、より一層の通る声が出るという。さらに「ウーロン茶はのどの脂が流れるので飲まないです」と鍛え方もケアも独特だ。

 「クセがスゴい!」と話題の両手を小刻みに動かすストライクコールも「より一生懸命やっている姿を見せる方法を考えていたら、こうなりました」。一直線なひたむきさが生んだ個性といえる。

 見逃し三振のポーズが独特なのは、市川審判員だろう。片足を上げ、両手でガッツポーズを作るような豪快なアクションはファンからも「カッコいい」という声が上がるほど。

 友寄審判長から「ちょっと変わったものをやってみたら」との助言を受け「メジャーで一塁などのアウトコールで片手、片足を上げている審判がいてヒントにした」と作り上げたアクションだ。

 ただ、こだわりは見た目の派手さ…ではない。大事なのは説得力だ。通常のストライクコールなども「説得力が見えないとお客さんや選手も納得しない。アクションが小さいと(判定に)自信がないのかとなる」と、判定に説得力を出すという信念が隠されている。

 ベテラン審判員も常に試行錯誤を重ねる。両拳を突き出す力強いストライクコールなど“全力ジャッジ”が話題の西本審判員。「自分は体が小さいので、キレや力強さを出したいと思っています」とその意図を説明した。

 今季が32年目のベテラン審判員。自らの完成形を長年貫いてきたのかと思えば、今のアクションを始めたのは昨季からだという。

 「メジャーの審判員や諸先輩方の物まねから入る。そこから自分でアレンジします。いろいろとやってきましたね」。その作業を、今も続けているのだ。

 しっかりと判定を選手やファンに周知させるのが基本。通る声、キレのあるアクション。何がベストなのか-。それを模索し続ける姿勢も代名詞の“全力”そのものだ。

 だがファンを楽しませる個性的アクションも正確な判定があればこそ。西本審判員は「反響はありがたいが、浮かれてはいられない。われわれは正確な判定が第一。判定が間違ってばかりでパフォーマンスが派手になっては本末転倒」と語る。

 そのための体力強化、そして技術向上。そこではリプレー検証導入が効果を生んでいるという。前日のリプレー検証映像は翌朝に全審判員へデータとして送られる。友寄審判長は「試合開始前に、なぜあの位置に入ったのかなど反省会が行われている」と説明した。

 さらに19年からはトラックマンのデータ解析を用い、ストライクゾーンの精度を高める試みも行われている。

 「データは球審になった翌日に振り返っている。個々の審判員にストライクゾーンの傾向が出るので各審判員へ伝えて修正してもらいます」。地道な取り組みが生む正確な判定。その基礎があればこそ個性は許容される。

 各審判員のパフォーマンスをすべてのファンに楽しまれるということは、技術面への信頼の証しともなる。これから始まるシーズン、自分好みの個性派審判を見つけてみてはいかがだろうか。(デイリースポーツ・中田康博)

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