【スポーツ】フランスW杯メンバーに落選したカズが、そのままチームに帯同していたら

 横浜FC・三浦知良
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 あのときキング・カズが現地に残り、チームに帯同していたら、どうなっていたのだろう。彼は、日本サッカー界は変わっていただろうか。

 サッカーの日本代表は28日、千葉・フクダ電子アリーナで行われた2022年FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選でミャンマーの10対0と大勝。アジア最終予選進出を決めた。1998年のフランスW杯で初出場を果たして以来、7大会連続7回目出場にまた一歩前進した。

 フランス大会で忘れられない出来事が、キングカズこと三浦知良(54)の出場メンバー落選である。私はスイスのレマン湖畔にある代表の合宿地・ニヨンで現地6月2日、当時の岡田武史日本代表監督の「外れるのはカズ、三浦カズです」という言葉を聞いた。

 膝の故障と自らの衰えで、カズ本人には漠然とした予感があったのかもしれない。発表前夜、出場枠22人の当落線上にいたメンバーを中心としたチームは、スイスの3部リーグに所属する現地の「スタッド・ニヨネ」と練習試合で対戦。カズは97年9月7日に国立競技場で行われたアジア最終予選・ウズベキスタン戦以来のハットトリックを決めていた。

 結果を残したカズにとっては大きなアピールになったはずだが、試合後の彼の口調、表情を今でも思い出すことがある。Jリーグのヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ1969)を担当していた私に対し、カズはいつも“ため口”だった。だが、その夜のカズは、私の質問に対して「膝は少し痛いです」などとすべて敬語で、違和感しかなかった。

 その夜が、スイスでカズに会った最後だった。メンバーが発表されていたころには現地を離れ、大好きなイタリアのミラノに向かっていたからだ。このとき、岡田監督がカズに対して練習相手の役割も担う、サポートメンバーとして帯同することを打診したが、本人が断ったという話があった。

 カズの“第二の故郷”であるブラジル代表でも、けがのためFWロマーリオが落選。物議を醸したが、ロマーリオはサポートメンバーとして最後までチームに帯同したはずである。

 歴史に「if」はない。だが、もしもカズがサポートメンバーとしてフランスに行っていたら、その後の彼のサッカー人生にどう影響を及ぼしたのだろうか。指導者としての道を模索し始めて現役を引退、指導者ライセンスを取得し同世代の選手たちのようにJリーグで指揮を執るようになったかもしれない。

 カズはスイスから日本に帰国した際、成田空港での会見で「日本代表としての誇りと魂みたいなものは、向こうに置いてきた」と言ったと聞いた。その言葉が置かれた場所は大好きな女優、故オードリー・ヘップバーンが眠るレマン湖畔。そんなこともあり、6月2日は今でも1年で忘れられない日となっている。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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