減量なし、痛みなし ボクシングを生涯スポーツへ マスボクシング第1回全国大会

19年に行われた全日本ゴールデンキッズマスボクシング大会で熱戦を繰り広げる子供ら(日本ボクシング連盟提供)
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 東京五輪で金1、銅2、計3つのメダルを獲得したアマチュアボクシングで、新たな道が模索されている。国内アマを統括する日本ボクシング連盟は、11月6、7日に宮崎県えびの市で第1回「全日本マスボクシング大会」を開催する。直接打ち合わないマスボクシングを正式種目とし、老若男女を問わない生涯スポーツとして競技人口を拡大する目的。同連盟ではパラスポーツとしての普及も視野に入れている。

 マスボクシングとはプロ、アマともに日常的に行う実戦練習で、いわゆる“寸止め”の打ち合い。練習では軽く打撃を加えたり逆に力を抜いて形だけ打ったりすることもあるが、同連盟ではルールを整備してこれを競技化。安全に技術を競う種目として間口を広げた。

 大会出場は、小学1年以上なら年齢制限はない。身長によって階級が決まるため、体に負担がかかる減量がないことも大きな特徴だ。第1回全日本大会には各都道府県から105人が駒を進め、76歳の元全日本社会人選手権ライトフライ級王者、萩原利文さんが“現役復帰”するなど、60歳以上も8人がエントリー。また、ケガでリングに上がれなくなった高校生の元アマ選手なども参加する。

 同連盟によると、国の統括団体が運営するマスボクシング大会は世界初で、健康プログラムとしての普及を目指して国際ボクシング協会(AIBA)にも協力を求めた。菊池浩吉理事は、技術レベルによって「段」や「級」のような目標値を設定し、遠隔地でも「VRの中で対戦できるようなプログラムも考えている」と言う。また、車いすの選手同士の対戦など「パラボクシング」の確立や、パラリンピックへの参加も視野に入れる。

 厳しい減量を乗り越えてリングに立ったボクサーの倒すか倒されるかの戦いは大きな魅力だ。一方で、アマチュアならではの技術戦も、東京五輪である程度認知されただろう。それがマスボクシングなら自分で体験できるというのがアピールポイントでもある。

 少子化による競技人口の低下はどのスポーツも抱える課題だ。また、コロナ禍ではコンタクトスポーツのリスクが問題となった。

 マスボクシングによって子どもたちへのボクシングへの間口が広がれば、才能発掘の機会も増える。また、高齢化で生涯スポーツの需要も高まっている。誰にでも手の届くスポーツへ。今回の大会は、減量苦や痛みを伴うボクシングの既成概念を覆す、生涯スポーツとしての新たな挑戦でもある。(デイリースポーツ・船曳陽子)

 ◆全日本マスボクシング大会 小学校低学年から71歳以上まで年齢で6カテゴリー、さらに年齢、性別、身長で計60階級に分けられる。予選が1分30秒1ラウンド、決勝が同2ラウンド。採点は、打撃が当たらない距離をとった上で、重心が乗った正しい打撃動作でパンチが当たったと見なされる数をカウントする。相手が防御動作をできない場合、相手の反応が遅い場合はポイントになり、相手に正しい防御動作があればカウントされない。必ずどちらかに優劣をつける10ポイントマストシステムで、相手に実際に打撃を与えると1点減点。3回目には失格となる。

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