【スポーツ】プロ化目指す日本ハンドボールリーグ 初代代表理事・葦原一正氏はプロ野球界も従事のハンド未経験者

 日本のスポーツ界に新しい風が送り込まれようとしている。昨年12月、日本ハンドボールリーグがプロリーグ構想を公表した。2024年からの実施を目指してかじ取りをするのが、昨年4月に日本ハンドボールリーグ機構のトップ、初代の代表理事に就任した葦原一正氏(43)だ。

 早大大学院を卒業後、2007年にプロ野球・オリックスで経営企画などに従事。12年にDeNAへ、15年にはバスケットボール・Bリーグに身を置き、川淵三郎氏の下で事務局長などを歴任した。類いまれな経歴で、特にスポーツビジネスにおいて豊富な経験を有するものの、ハンドボールの世界とは無縁だった。

 「ハンドボールをやったこともないし、見たこともありませんでした。選手については、当時だと宮崎大輔(現アースフレンズBM選手兼監督)や、土井レミイ杏利(現ジークスター東京)を知っているぐらい。変えていきたいという話があったので、お話させていただいて…」

 日本ハンドボールリーグは現在、男子12、女子11の計23チームで構成されている。そのうち約7割が実業団、いわゆる企業チーム。葦原氏は「実業団を悪いと言うつもりはない」と前置きした上で「一つの問題点は各チーム、年間の支出が2億円はかかっているけど、売り上げが1千万円しかない」と指摘する。将来的に不測の事態が起きても対応できるように「2億円使うのであれば、2億円稼ぐ体制にしないと続いていかない」と説明する。

 改革の一環として、効率的に物事を進めていくため収益をリーグで一括管理する「シングル・エンティティー」制度と、現役のうちから学びの場や働く場を提供し、セカンド・キャリアに備える「デュアル・キャリア」制度を提唱。プロ化の条件には①少なくともチームの半分の選手がプロ契約②1500人以上収容の体育館を保有③12歳以下の育成型下部組織を持つ④チーム名に都道府県・市区町村などの地域名を入れる、などを掲げている。「細かい意見はいろいろあるけど、しっかり稼いでいこう、盛り上げていこうという思いは各チーム同じ」と、現場との認識は共有している。

 葦原氏は『まずはハンドボールを知ってもらうこと』をモットーに、メディアへの協力が欠かせないとして、時間の許す限り地方へのあいさつ回りも行っている。反応はさまざまだというが「ハンドボールが変わりつつある、ということを知ってもらいたい」と汗をかき続けている。

 「ハンドボールの裾野はしっかりしている。競技人口は10万人。それに見たら面白い。Bリーグが立ち上がったとき、川淵さんがよく『バスケットの次はハンドボールだ』とおっしゃっていました」。葦原氏はプロ化への流れを、2016年にシーズンがスタートしたBリーグに重ね合わせる。そして今や、Bリーグは屈指の人気を誇る競技の一つにのし上がった。

 今後は8月末までに書類提出、そして審査を経て、10月には新リーグに参加するチームが決定する予定。「何年かかかると思う。焦らずにやっていく」と話す葦原氏の強みの一つは、ハンドボール未経験者にあると思っている。スポーツビジネスにたけている一方で、世間に近い目線でいられることが相乗効果を生むと想像している。2年後、どのような風が吹いているのか。日本ハンドボール界に注目している。(デイリースポーツ・高橋伯弥)

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