【野球】チーム改革に“大リストラ”は必要か 93年オフ、横浜で起きた大量解雇劇を振り返る

 チーム改革に、大胆な“リストラ”は必要不可欠なのか。1993年オフに敢行された横浜ベイスターズ(現DeNA)の大量解雇劇を振り返る。

 その年就任した近藤昭仁監督の下、チームは横浜大洋ホエールズから横浜ベイスターズに球団名を変えて優勝を目指したものの結果は5位。それでも担当記者だった私は、投打ともに若手選手が育ってきており、翌シーズンを楽しみにしていた。ところが、沖縄・宜野湾での秋季キャンプ中に想像もしていなかった大事件が勃発した。11月8日、横浜市内にある球団事務所に秋季キャンプに参加していなかった主力6人が呼び出され、来季の契約を結ばない旨を通告されたからだ。

 今も同じだが、その時期になればどの球団でも戦力外を通告される選手が続出する。プロ野球は実力の世界だけに、そんな選手たちを何人もみてきた。ところが、6選手の顔ぶれをみてがくぜんとした。過去、8度も打率3割をマークしていた高木豊氏(65)、3度の盗塁王に輝いていた屋鋪要氏(64)、チームで4番を打ったこともある山崎賢一氏(61)、ローテーション投手の一人だった大門和彦氏(58)らが含まれていたからだ。特に、高木氏と屋鋪氏は加藤博一氏とともに「スーパーカートリオ」と呼ばれ、85年には3選手で計148盗塁を記録した俊足好打で守備もうまい名選手だった。

 その彼らが突然、戦力外通告をされたのだ。そのときのぼうぜん自失状態を忘れない。高木氏は「いきなり呼ばれてクビと言われても…」と言葉を絞り出していた。屋鋪氏は「ゴミをゴミ箱に捨てるように」と悲痛な表情を浮かべていた。

 取材していて戦力外通告の理由は力が衰えた-と判断されただけではなかったと思う。当時、球界内には駒田徳広(現巨人3軍監督)がFA宣言するという見方が主流だった。横浜としては、争奪戦が予想される駒田氏を獲得するため、資金捻出の意味もあったに違いない。戦力外通告された6人の推定年俸は計約2億4000万円。巨人でプレーしていた駒田氏の推定年俸1億2000万円で2年分に相当する。こんな疑問を何度も球団幹部にぶつけたが、最後まで明確な返答は得られなかったが…。

 主力の大量戦力外通告は確かに強引な手法だったかもしれない。だが、駒田氏が入団してからチームは徐々に変革し、数年後の98年には二度目のリーグ優勝、日本一に輝いている。退団組が新たな活躍の場を得たは救いだ。高木氏はその後、日本ハム入り。大門氏は阪神、山崎氏はダイエー(現ソフトバンク)に入団した。また、屋鋪氏は、巨人・長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)が「あれだけの守備範囲があって、走れる選手はウチには少ない」と興味を示し、わずか1週間で巨人入りし、翌年の日本一メンバーになっている。

 不思議な縁で、私も94年に巨人担当になった。同学年で気安い仲だったこともあり、巨人での再会に「2人で巨人に拾われた」と笑い合ったことを覚えている。

 強いチームは1、2年で出来上がるわけではない。時には大なたを振るうことも必要なのかもしれない。93年のベイスターズをみてそう思う。(デイリースポーツ・今野良彦)

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