【野球】4割打者誕生は夢物語で終わってしまうのか 今季もDeNA・宮崎がはね返された分厚い壁 評論家が可能性を解説
今季も高く、厚い壁がそびえ立った。DeNA・宮崎敏郎内野手は5月25日の巨人戦終了時まで打率・402をマークし、NPB史上初の4割打者誕生に期待が膨らんだ。だが、自身2度目の首位打者は獲得したものの、最終打率は・326にとどまった。やはり日本球界において、4割打者誕生は不可能なのだろうか。
NPB史上最高打率は1986年に阪神のランディ・バースが記録した打率・389。続くのは日米通算4367安打を放ったイチローが、オリックス在籍時の2000年に記録した・387。両選手とも、あと5安打で打率4割に手が届いていた。
2度の三冠王に輝いたバースや、オリックス時代に7年連続首位打者に輝いたイチローですら成し遂げられなかった金字塔。前人未到の地に足を踏み入れる可能性はどこに隠されているのだろうか。
惜しかった選手がいる。2017年の日本ハム・近藤健介外野手(現ソフトバンク)だ。右太ももを痛めて戦線離脱する6月6日まで打率・407をキープ。約3カ月半後の9月28日に復帰し、最終的に打率・413をマークしたが、規定打席には遠く及ばなかった。
3度の三冠王を獲得した落合博満氏の最高打率は、2度目の三冠王を獲得した1985年に記録した打率・367。だが、中日監督時代に「4割だけ狙えと言われたらいけたと思うよ。ただ、俺にはランナーをかえすという役目があったからね。ホームランも打たなきゃいけないし、打点も挙げなきゃいけなかったから実際、打率だけを追い求めることはできなかったんだけど。今でも、打率だけ上げろと言われれば、4割は達成できたと思ってるよ」と語っていた。
阪神OBの中田良弘氏は「ピッチャーのレベルが上がり続けている現状を見ると、4割バッターっていうのは難しいと感じるよね。今の投手は平気で150キロを連発するし、変化球も多彩。球種が増えていることもあるから、現実的には厳しいのかなと思う」との見立てを示した。
ただ、中田氏は続けて「ひとりの力ではなく、2人がひとつになれば可能性はあるのかもしれない」と語った。「昔、バースがよく言ってた。『俺が三冠王を取れたのはカケ(掛布)のおかげだ』って。後ろに勝負したくないバッターが控えていれば、四球を出したくないからストライクゾーンでの勝負が増える。そうなるとヒットを打つ確率が上がるという図式が成り立つ。ここに4割打者誕生のヒントがあるのかな」と解説した。
投高打低の構図が際立つ近年。打率4割到達に向けては、安打を量産することはもちろん、四球を多く選んで打率の低下を防ぐ選球眼も不可欠。左打者であれば、右打者より約70センチ一塁ベースに近いことを生かして内野安打を増やすことも打率アップへの近道。直近10年の最高打率はソフトバンク・柳田悠岐外野手が2015年にマークした・363。オリックスがリーグ4連覇、阪神が2年連続日本一を目指す2024年。日本プロ野球に新たな1ページを刻む巧打者の誕生にも期待したい。(デイリースポーツ・鈴木健一)