【スポーツ】わずか参戦2戦目でF3優勝 スイス人ドライバーが持つ圧倒的スピードとセンス
天性のスピードとレース勘を証明した。スイス人ドライバーのミハエル・サウター(19)が日本のF3参戦わずか2戦目で初優勝。「日本に来る前は、こんな結果が出るとは想像できなかった。この1年でいろんな経験ができた」と今シーズンの挑戦を振り返った。
11月26日にスポーツランドSUGO(宮城県)で開催されたフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップ(FRJ)第6戦。第3レースでポールポジションからスタートしたサウターは、見事なポールトゥーウインを決めた。スタートで出遅れ2番手から巻き返しを狙うと、5周目で一瞬のチャンスを逃さずトップを奪回。そのまま独走を貫き、チェッカーフラッグを受けた。
参戦2戦目と思えない落ち着いたレース運びで持ち味を発揮。公式予選でも第2、第3レースのポールポジションを獲得するなど、スピードはずばぬけていた。しかし本戦はなかなか思うようなレース運びができず追い込まれていた。2位スタートだった第1レースはフライングスタートで10秒ペナルティーを受け4位。ポールポジションの第2レースは途中コースアウトでリタイアとミスが続いた。
それだけに、最後の第3レースで表彰台の中央に立てたことは「とてもいい気分。ホッとした。みんな応援してくれていたし、プレッシャーがあった」と格別の喜びだ。「チームスタッフのおかげ。メカニックの人たちの指示通りに走ってうまくいった」と、今回参加したチーム「Bionic Jack Racing」のスタッフに感謝した。そして「自分が速いという自信はあったので、追い抜くチャンスはあると思っていた」と自分を信じて結果を出した。
サウターにとって、日本のレースは特別な意味を持つ。母・美由紀さんは兵庫県出身。母方のルーツがある日本で勝てたことは、自身のアイデンティティーを再認識することでもあった。F3初参戦だった今年7月のモビリティリゾートもてぎ(栃木県)では4位入賞を果たし、今回の優勝へ弾みを付けている。
SUGOは、F1通算91度優勝のミハエル・シューマッハーが1991年の全日本F3000(現全日本スーパーフォーミュラ選手権)第6戦に初参戦で2位を獲得し、直後にF1デビューへの飛躍を遂げた場所。アップダウンが激しい難コースとしても知られる。同様に初めてのコース、慣れないF3マシンで結果を出したサウターの非凡さは、伝説のF1チャンピオンとオーバーラップする。
今年初めに「F3で5位までに入る」という目標を立てたドライバーは、年内最後のレースで優勝という快挙を遂げた。来季の参戦はまだ決まっていないが、自前のマシンで家族チームとしてヨーロッパ各地のレースを転戦する予定。日本で走るにはスポンサー探しなど、一からの営業活動が必要だが「日本のレースはエキサイティングで楽しい。また走れるとうれしい」と意欲をみせる。底知れぬ可能性を秘めた10代ドライバーの未来に注目したい。(デイリースポーツ・中野裕美子)





