【野球】故障に泣いた元阪神の最速159キロ右腕の今 プロで味わった挫折、現役引退して強く思うこととは

 昨季限りで戦力外通告を受けて現役を引退した元阪神投手の望月惇志氏(26)は、今季からタイガースアカデミーのコーチとして野球少年少女に指導を行っている。選手として区切りを付けた今、思うことは-。故障に泣いた最速159キロ右腕の第二の人生に迫る。

  ◇  ◇

 8年間駆け抜けてきたプロ野球生活が、望月の頭から簡単に離れるはずがなかった。引退を改めて実感したのは5月5日。アカデミーコーチの仕事として甲子園を訪れた時に登板直前の才木の姿を偶然、遠目に目にした。同じ高卒入団でリハビリの時間も共に過ごした1つ下の後輩。少し遠い存在のように感じた。「頑張れよ」。心の中でエールを送り、背番号35の背中を見送った。

 正月は高校卒業後初めて実家でくつろいだ。現役時代は大みそかまでトレーニング漬け。体を動かさない時間をもどかしく感じながらも、第二の人生を歩み出す決意を固めていった。故障に泣いた現役生活。それでも「感謝しかないです。後悔はない」と言い切った。

 高卒3年目の2018年に頭角を現し、37試合に登板。19年には先発にも挑戦し、プロ初勝利を挙げた。ターニングポイントとなったのは同年の巨人とのCSファイナルS。先発して2回5失点に終わり「このままじゃダメだと思って。もっと野球がうまくなりたかった」。最速159キロの直球をさらに磨くためにフォーム改造に着手。ただ、理想を追い求めていく度に沼にハマった。ついには右肩を故障。手術を経て再起を目指すも、かなわなかった。

 今季からタイガースアカデミーのコーチに就任。「子どもたちに何を教えようか」と四六時中、コーチ業のことで頭は埋め尽くされている。苦戦したのは伝え方。プロの世界では当たり前のように使っていた野球の言葉が子どもたちには通じなかった。

 「股関節や肩の内旋、外旋とか子どもはわからないよね」。いかに簡単な言葉、動作で理解してもらえるかが指導の第一歩。地域の少年野球チームに足を運んで学び、野球初心者の前でデモンストレーションを行うなどして伝え方を試行錯誤。先輩のコーチからも助言をもらい、やっと手応えをつかみ始めてきた。

 順風満帆ではなかった現役時代があったからこそ、子どもたちに伝えたいことがある。「第二の俺は絶対に作りたくない」。150キロを超える直球を投げられても、CSの舞台を経験しても、脳裏に残るのはつらいリハビリ生活。子どもたちが同じ道を歩まないようにするべく、今も全力で野球を学び続けている。「絶対にけがで苦しんでほしくない。ずっと野球が好きであってほしいです」。プロで味わった挫折が原動力。未来のスターたちの成長を支えていく。(デイリースポーツ・北村孝紀)

 ◆望月 惇志(もちづき・あつし)1997年8月2日生まれ、26歳。神奈川県出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。横浜創学館から2015年度ドラフト4位で阪神入団。プロ1年目の16年10月1日・巨人戦(甲子園)で初登板(救援)。21年オフに育成契約。22年9月に右肩関節唇修復手術を受けるなど、故障もあり23年オフ、戦力外に。通算62試合に登板し1勝1敗、防御率4・34。

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