【野球】阪神・木浪の先制打が生まれた理由 勝負の準備凝縮、個々のルーティン持つ1・5メートルの聖域

 力強くバットを振る者や、ジッと投手の球筋を観察する者、心を整えるようにジャンプを繰り返す者…千差万別の空間だが、プロ選手は個々のルーティンを持つ。次打者が控える場所「ネクストバッターズサークル」で、打席前から始まっている投手との駆け引き、心理戦。1日のDeNA戦(京セラ)での二回、木浪聖也内野手(30)が記録した先制打は、ネクストでの準備が凝縮された一打だった。

  ◇  ◇

 直径約1・5メートルの円形には物語がある。次に打席に立つ選手の待機場所で、ベンチと打席の間にある孤独な空間。中継にはあまり映らないが、選手個々のルーティンは興味深い。千差万別の世界で打席に立つ準備として、ネクストバッターズサークルは欠かすことができない。重要性を示した象徴的な打席があった。

 4月1日のDeNA戦。二回、好投手・ジャクソンから1死二塁を作り、井上が打席に立っていた。助っ人右腕はここまで最速158キロの直球で押し、チェンジアップ、スライダーでタイミングを外す投球。そんな中で井上に直球を3球続け4球目。この日初めて投げたカーブに手が出ず見逃し三振に倒れた。ネクストの木浪は冷静だった。

 「意識をしたというよりは、どういう球種を投げるのかは全部頭に入っていました。その中でどの球がきたらどう対応できるかというか、それがたまたま良かった感じです」

 直球が3球続き1-2。井上と同じ配球で迎えた4球目、132キロのカーブに体が反応した。コースに逆らわず打ち返すと、三遊間を破る適時打が先制点になった。

 ネクストの準備が生んだ一打。木浪と同じように投手を観察し、思考を巡らせるのは近本だ。「前の打者が投手とかは関係ない。あの場所では、どうやって打とうかしか考えていないです」。そこから打席前で一度、屈伸を入れ、スイングして歩き出すのがルーティン。続く中野は軽いスイングを繰り返しながら、近本の打席を参考にして待ち球を決めるという。

 「相手投手にタイミングを合わせたりとか、どういう状況で回ってくるか頭を整理します。最初の打席は特に、ある程度投手の投げるタイミングで、どの辺でタイミングを取ろうかなというのは考えますね。近本さんの打席を見ながらですね」

 佐藤輝は両足を相撲の股割りのように開き屈伸を二回。そこから投手とのタイミングを計る。幼い頃から憧れの存在だったイチロー氏のルーティンを参考にした。大山は直前でフルスイングを三回。体に目いっぱいの負荷を掛けて打席に向かう。森下は左手に持ったバットをグルグルと回し、構えに入ると投手から視線をそらさない。「どの場面でも変わらないです。タイミングだけ合わせています」と明かした。

 バッテリーとの駆け引きや、心理戦の舞台にもなる1・5メートルの円形。木浪は心を整える場所でもあるという。「満塁男」の異名を持つ30歳は仲間の心強さを感じながら気持ちを奮い立たせる。「下位にいて満塁で打席が回ってくることはそうない。それでもみんながつないでくれて回してくれる。その思いが自分を打たせてくれていると思っています」。心技体を整えながら、打席を打線につなぐ空間。ネクストから勝負は始まっている。(デイリースポーツ・田中 政行)

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