【中塚美智子医師】歯の根の先に膿の袋が…「歯根嚢胞」とはどのようなもの?

「歯の根の先に膿の袋ができていますね。」と言われたことがありませんか。痛い、腫れているなどといった症状もないのに、エックス線写真を見ると歯の根の先に丸く抜けたような像が見られ、心配になりますね。

これは歯根嚢胞(のうほう)といい、歯の根にある歯髄(しずい)、いわゆる歯の神経が細菌感染した後、その感染が歯の根の先に及んでしまうことでできます。顎の骨の中に膿など液状のものが溜まり、その外側が膜のようなもので覆われているため、骨の中で独立した形で存在しています。神経が死んでしまった歯、歯の神経を取る治療を行った歯の根の先でみられます。

嚢胞が小さいと冒頭のように全く気づかないのですが、周囲の骨を溶かしながら大きくなると痛みや腫れが起こり、できた場所によってはしびれや骨折が生じることもあります。

嚢胞が小さい場合歯の根から洗浄、消毒して歯を残す治療を行いますが、それで治まらない時は骨に穴を開けて嚢胞を摘出します。また歯の根の先端を切除したり、歯を抜いたりしなければならなくなることもあります。

嚢胞にはこの歯根嚢胞のほかにも、顎の中に留まって生えてきていない歯の頭の部分を含む含歯(がんし)性嚢胞や、蓄膿症の手術後数年から数十年経ってからできる術後性上顎嚢胞、唾液を出す管が詰まり、唾液が溜まってできる粘液嚢胞といったものもあります。このうち含歯性嚢胞は上顎では前歯付近、下顎では親知らず付近でできることが多いです。また粘液嚢胞は舌の裏側の粘膜にできることがありますが、ガマガエルの喉に似たように見えるため、ガマ腫(ラヌーラ)ともいいます。いずれも悪性ではありませんが、嚢胞の手術を行うことになります。

◆中塚美智子 大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、労働衛生コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士。

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