【松本浩彦医師】「秋茄子は嫁に喰わすな」…3つの解釈、知っていますか

 「秋茄子は嫁に喰わすな」。おそらく一度くらいは耳にされた諺(ことわざ)と思います。茄子(ナス)はインド原産の夏野菜です。一番おいしいのは秋とされていますが、昔と今では暦の違いから夏と秋の区分も異なります。

 「おいしい秋のナスは、もったいないから嫁には食べさせるなという姑(しゅうとめ)の嫁いびりの言葉。また反対に、ナスは体を冷やす、あるいは種が少ないので、子供ができないといけないから嫁には食べさせるなという、嫁を大切に思う言葉」と相反する意味で解説されていますが、実は3つ目の解釈があります。

 ここでいう「よめ」は「夜目」と書き、ネズミを指しているという説です。鎌倉時代の和歌集『夫木和歌抄』に「秋なすび わささの粕につきまぜて よめにはくれじ 棚におくとも」という歌があります。これは、酒粕につけた秋ナスをおいしくなるまで棚に置いて、ネズミに食べられないように注意せよという意味です。この和歌が語源とすると、3つ目が正解となります。

 私としては、土の上に成る野菜は体を冷やし、土中に成る野菜は体を温めると常々申しておりますので、お姑さんの優しさと取りたいところですが、実際どれが正解でも、今の日本の食文化にはあまり関わりはありませんね。旨いものは旨い。ちなみに英語ではEggplantと呼ばれます。白い種類のナスがあって、こちらは本当に卵そっくりです。

 さて9月9日は重陽の節句。菊の節句とも呼ばれ、菊酒や栗ご飯を食べる風習があり、この日にナスを食べると中風(脳血管障害の後遺症)にならないとも言われています。「親の意見と茄子の花は、千に一つの仇(あだ)もなし」という諺と併せて、一度そのあたり、調べてみてはいかが?

◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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