「犬に噛まれやすい」「分娩が多い」 満月の夜の不思議…データを調べてみると

 いま、政治不安で大変なミャンマーですが、ミャンマーの救急外来では、いちばん多く扱う外傷が犬咬傷(こうしょう)らしいです。満月になると狼男に変身する映画もありましたが、犬は満月の日に凶暴になるのでしょうか。

 英国のとある病院の救急外来で、動物咬傷1621例(95%が犬)を検討した研究があります。この間に満月は37日あったのですが、咬傷の数は満月の数日前から増加しはじめ、満月の日には約2倍になるというデータを報告しています。

 日本でも産業医大から提出された論文に、動物咬傷症例を月齢に着目して調査したという研究があります。その結果、動物咬傷168例中、満月の日に発生した犬咬傷は70例中17例で24・3%にのぼり、満月の日に有意に多く発生しており、満月時期における犬咬傷発生に対する注意喚起は有用かもしれないと結論づけています。

 その話を同級生たちとしていたら、産婦人科に進んだ友人のひとりが、満月の日は分娩が多い、と言い出しました。ところがこれについて文献を調べると賛否両論で、明確な答えが見つかりません。

 でも、見つけました。日本で400頭あまりの雌牛(ホルスタイン)の出産日と月齢の関係を調べた結果、満月の日を中心に3日間の出産数が統計学的有意に多かったという結果です。これはちゃんとした査読論文としてネットで公開されています。しかし、アイルランドやイタリアから発表された論文では「無関係」とする報告もあります。

 真偽はともかく、ラテン語で月を表す「Luna」から派生した英語の「lunatic」は「狂気にみちた」という意味ですし、医学の世界では疾病と月齢の関係について数多くの研究があるのも事実です。

◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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