偏差値エリートなら優秀な医師になれるのか

 以前はよく、医師国家試験に落ちる夢や大事なテストに遅れるなど気分の悪い夢を見たものです。医師になって30年近くになり、ようやく見なくなったという感じです。私は非常に運がいい人間で、現役で大学に合格し、留年なしの最短コースで医師になれました。

 しかし大学での成績は悪く、就職希望の三井記念病院にも受かるはずがないと周囲から辛辣なお言葉を頂きました。カンファレンスは英語だし、全国からトップクラスが来るのに、やめとけと。実際にはカンファレンスは東京弁で大阪弁しか話せない私には少々きつかったですが…。ところが、なぜだか、その病院のレジデントになることができました。

 最近の医学部は、非常に難しくなっているようです。私の頃は国公立の医学部が断然難しかったのですが、今は私立の医学部の偏差値が急上昇して、逆転現象も起きているようです。いずれにせよ、偏差値エリートが医師になるという傾向は強くなっていますね。

 そこで問題です。偏差値が高く成績が優秀ならば、優秀な医師になれるのでしょうか?答えは、ノーです。机上の論理は優秀なのに実力が反比例の人を時々見かけます。不思議なものです。日本で最も優秀と言われている中学、高校、大学を出て同じ外科医をしていた人ですが、手術の手順は手術書に書いてある通り一言一句間違えず暗記しているのですが、実際に手術室に入ると全くと言っていいほど、腕が動かなくなってしまうのです。

 また、別の人は同じ大学をトップで卒業し、その後も優秀な成績を残しているのですが、癌(がん)を全く取ることなく手術を終わらせたことも。それを人のせいにして自分は責任を取ろうとしないケースがあったとか。勉強が大切なことは言わずもがなですが、他にも学ばなければならないことは多いのです。

 ◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。

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