年をとると耳が遠くなるのはなぜ?それでも「うちの姑は悪口だけよく聞こえる」不思議

 題を見てお気を悪くする方もおられるかもしれませんが、まぁ、あくまで一般論。巷では間々あるお話だと思ってお読みください。逆の場合だってありますから。

 人間は老化と共に、皮膚も筋肉も、体の組織は次第に硬化していきます。鍛えている人は高齢でも若い人と変わらない柔軟性を保っている方もおられますが、鼓膜つまり聴力は鍛えるわけにはいきません。年をとると鼓膜はだんだん硬くなります。そうなると小さい音、つまり細かい空気の振動を拾えなくなります。

 年をとると耳が遠くなるのはそういうことです。ところが鼓膜が硬くなると、音の大きさだけでなく、同時に音の高低にも関わってきます。空気の振動で見ると、同じ大きさなら、低い音は波が低く幅広い振動で力があります。逆に高い音は波が小さく細かいため、鼓膜を振るわせる力が弱いと考えてください。

 そうなんです。50歳代になると高い音が聞こえにくくなってきて、70歳代では音が大きくても高い音はますます聞こえにくくなります。私は多くの企業の産業医を務めていますので、全社員の健康診断の結果を一瞥するだけで、すぐに判りますが、高齢者になるほど高音が聞き取りにくいのです。

 例えばお嫁さんが、お姑さんの悪口を言う時、大声で声高には話しません。ボソボソと、聞こえないように低い声で言います。そもそも悪口を大声で、高い声で言う人はいませんよね。そう、それなんです。悪口はその人に聴かれては困るので、低い声で言います。歳を取ると高い声は聞こえにくくなっても、低い声は聞こえるのです。それで「うちの姑は悪口だけは、よく聴こえる」ということになるのです。でもまぁ「人を呪わば穴二つ」。他人の悪口を言うのはあまり褒められたことではないということですね。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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