虫が光に集まる理由がついに判明!惹きつけられているのではなく閉じ込められていた

 私たちは昔から、虫が光に集まることを知っていました。「飛んで火に入る夏の虫」と言うやつです。おそらく人類が火を使い始めた時から知られていたでしょう。ところが実は、その「理由」は未解決のままだったのです。有力な仮説はいくつも存在しましたが、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)で行われた研究により、虫が光の周りに集まる本当の仕組みが、ついに解明されたのです。

 人工照明を用いた実験を通して、虫は光に背を向けて、光に対して垂直な方向に飛行していることがわかりました。なぜ虫は光を背に受けて飛行するのでしょうか。太陽や月などの自然界の光は、基本的には虫の頭上にあり、それに背を向けることで正しい飛行姿勢を保つことができるからです。専門的には「背光反射」と呼ばれる虫の本能です。背中に光を受けながら飛ぶことで、自分が地面に対してまっすぐ平行に飛んでいることを認識しているのです。

 背光反射は虫や魚によくみられる姿勢制御機能です。大きな動物は重力を感知することで上下感覚を認識しますが、小さな虫や魚は適切な重力を感知することができず、そのため重力と反対の方向にある月や太陽の明るさによって重力を検知し、明るい方向に自動的に背中を向けているのです。飛行中の虫が下からの光に照らされると、背中を下に向け失速して墜落します。虫の横側から光を当てると、光源の周りをグルグル周るような動きをみせます。

 背光反射は古くから知られていましたが、昆虫をとらえる原因が光であると特定されたのは今回の研究が世界初です。焚き火や電灯などの人工照明は、遠くにいる虫を惹き付けているのではなく、たまたま近くを通過した昆虫を明るい範囲に閉じ込めているだけだったのです。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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