危険な「殿様枕症候群」 15センチ以上の高い枕だと椎骨動脈解離発症率が10倍に! 医師が警鐘
SNSで話題になっている新しい疾患が「殿様枕症候群」です。これは最近、大阪府吹田市にある国立循環器病研究センターから発表された疾患概念で、若年や中高年に起こる「特発性椎骨動脈解離による脳卒中の一部」とされています。
千鳥のノブさんがこの疾患にかかった時、私もコラムで解説しましたが、ただの「寝違え」だと見逃される例が相当数あると思います。普通は「頚部の安静」で自然治癒しますが、解離が進むと「くも膜下出血」に至ることもあります。もし朝起きて後頚部が痛み、自分で寝違えだと思っても、ストレッチなど首を激しく回したり動かしたりするのはやめてください。
首をポキポキ鳴らす整体によって椎骨動脈解離を起こす事例もあるようで、首ポキと呼ばれる「スラスト法」について欧米の研究では、平均年齢41歳の脳卒中患者集団では、30日以内にスラスト法を受けていた人が、受けていない人の4倍以上いた、という報告があります。
しかし大部分は誘因なく発症するのが椎骨動脈解離で、国立循環器病研究センターの研究グループは、高い枕を使っている人に注目しました。それが「殿様枕」です。
高い枕の使用が特発性椎骨動脈解離と関連があるかどうかを調べたところ、特発性椎骨動脈解離の患者53例と非罹患患者53例のうち、高い枕の使用と疾患の発症に明らかな関連がみられました。15センチ以上の極端に高い枕では、発症率は10倍でした。この結果から、特発性椎骨動脈解離の約1割が「殿様枕症候群」だと予測できます。
殿様だけでなく、江戸中期では市中でも流行した高い枕は、男性ではちょんまげ、女性では結い上げた髪を崩したくなかったという背景があるようです。ちなみに「殿様枕症候群」、英語でどう言うか調べたら「Shogun pillow syndrome」でした。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。