皮膚に常在するのは黄色ブドウ球菌など…手作りも度を越すとひどい健康被害に

 紅麹サプリメント事件では、原因が本当に紅麹なのか判らないうちからマスコミ報道が過熱しました。ですがもっと危険な食べ物が、この世にたくさんあります。特に最近は「発酵食品」ブームで、自宅で発酵食品を作る人が増えていますが、自家製のみそやヨーグルトなどの発酵食品は、危険と隣り合わせです。

 自家製パンに天然酵母を使います。果物や野菜にもそれぞれ特有の酵母が繁殖しています。りんごやイチゴ、ナスやトマトなどにもそれぞれ異なる酵母がついています。

 こうした複数の酵母菌が混在する状態で培養したものを天然酵母と呼びます。パンに天然酵母を使うと、独特の風味が生まれてそれはそれでいいのですが、問題は雑菌の混入です。天然酵母自体は問題なくても、パン生地をこねる時に手をよく洗っていない、台が汚れていた、などが原因で雑菌が混入します。

 パンは焼くから大丈夫、ではありません。食中毒菌は毒素を作り出し、それは熱でも分解しません。天然酵母の食中毒で多いのが、他人からもらった酵母液を使って事故が起きる例です。発酵食品を自作する人たちは酵母を分け合うことがありますが、器を移す際に雑菌が入るのです。

 とあるホテルで、「手の常在菌を使って発酵させたシロップ」のジュースを出していたことで保健所の監査を受けました。健康な人の手は乳酸菌が生息し弱酸性で雑菌を殺すとか、ぬか漬けが各家庭で味が違うのは、かき回す人の手の乳酸菌のおかげと言いますが、間違いです。皮膚に乳酸菌はほとんどいません。

 皮膚に常在しているのは黄色ブドウ球菌やニキビの原因となるアクネ菌で、発酵に皮膚常在菌を使うのは、食中毒の原因を作ってるのと同じです。自家製の発酵食品を食べて腹痛や嘔吐が出現したら、すぐに医者へ行ってください。手作りも度を超すと工業製品よりもひどい健康被害を引き起こします。くれぐれも気をつけてください。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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