なぜ薬不足なのか 厚労省、財務省の施策に行き着く→「ジェネリック医薬品を普及させる」
いま医療界は「薬不足」という深刻な事態に直面しています。コロナ禍では薬局から解熱剤がなくなりました。解熱剤を買い占める人が大勢いたからです。しかしいまだに調剤薬局でも、解熱剤や咳止めなどが不足しています。病院内でも麻酔薬や抗菌剤の不足が原因で、手術を延期せざるを得ないことがあります。
いま起きている薬不足の要因は、根本をたどると「ジェネリック医薬品を普及させる」という厚労省、財務省の施策に行きつきます。同じ有効成分を含有した医薬品は、先発品と後発品(ジェネリック)の2種類があり、ジェネリックは薬価が安く設定されています。日本の国民皆保険制度では、病院の窓口や薬局で支払う薬代は自己負担1~3割の金額で、残りは我々が支払った保険金でまかなわれています。
こうした健康保険制度は世界に冠たる素晴らしいものですが、現在の日本の薬代は年間10兆円に迫る勢いで、このままでは保険制度は間違いなく破綻します。国はこれを回避する方法として、値段の安いジェネリックを普及させようと考えました。安いのは患者にとってありがたいですが、先発医薬品を製造販売してきたメーカーにとっては大問題です。「できるだけ先発品は使うな」ということですから、先発品メーカーはその薬の製造販売を中止するしかありません。
しかしジェネリックを製造販売しているメーカーは使用が推奨されて利益が上がっている、というわけでもありません。国は医療費削減を進めるために、定期的に薬価を見直しており、ほとんどの薬は2年毎に値段が引き下げられています。実際に効果があり発売当初は利益を上げていた薬でも、度重なる薬価引き下げで赤字に転換し、作れば作るだけ損が出るようになれば、製薬会社は製造中止せざるを得ません。昔からある解熱剤や咳止め、胃薬など、単価が安ければ利益も薄い。効果は二の次です。結局、製造中止の憂き目に合います。これがいま、全国で起こっている「薬不足」の裏側なのです。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。
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