大物芸人も罹患の食道がんと咽頭がん 飲酒リスクは顔が赤くなるならないで変わるのか 医師の見解
お笑い芸人の石橋貴明さんが食道がんと咽頭がんに罹患していることを公表し、多くの人に衝撃を与えました。報道では声のかすれや体調不良がきっかけとのことですが、元外科医として食道がんを専門にしていた経験から言えば、声のかすれががんに由来する場合、すでに早期とは言いがたい状況です。食道がんや下咽頭がんは声帯の動きをつかさどる反回神経周囲に転移や浸潤を起こしやすく、その結果反回神経が麻痺して声がかすれるということは稀ではありません。しかし幸い今回は早期がんとの発表なので、声のかすれは転移ではなく声帯の炎症やポリープなどが原因と考えられ、一安心しています。
食道がんは飲酒・喫煙歴を持つ方に多く発症し、同時に咽頭、喉頭、口腔内、胃、肺等にがんを合併することが少なくありません。食道がんの患者さんを診る際には、必ずこれらのがんの合併がないかをチェックしますし、治療後のフォローアップにおいても重要な観察ポイントです。これは、がんの原因となる酒やタバコにさらされるすべての粘膜ががん化し得るという事実に基づいています。
特にお酒を飲んだときに顔が赤くなる人でけっこう量が飲める人は、全く顔色が変わらなくて多量の飲酒ができる人よりも食道がんのリスクが高いといわれています。顔を赤くする物質がアルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドで、発癌物質です。顔色の変わらない人はアセトアルデヒドを酢酸に分解して解毒できるため発癌物質の曝露が比較的少なく、赤くなる人は解毒できないのでアセトアルデヒドの曝露が多くなり食道がんになりやすいというわけです。お酒を飲んで赤くなる人で、喫煙歴のある中高年の方は是非胃カメラを受けましょう。
◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。
