全国的に増加している百日咳 乳幼児では時に命の危険も…最も効果的な予防策の一つはワクチン接種
最近、例年になく百日咳が多いと思っていたのですが、当院のある尼崎市は全国でもトップクラスの発生数でした。今年は全国的に百日咳が増加しており、兵庫県は5月末時点で全国2位の発生数で、その約80%が尼崎市から報告されています。
百日咳は百日咳菌という細菌によって引き起こされる感染症で、その名の通り咳が長く続くのが特徴です。乳幼児では、咳き込み後に無呼吸やチアノーゼを起こし、時に命の危険も出てくるため特に注意が必要です。
診断は、鼻腔ぬぐい液のPCRや培養、血液検査(抗体検査)で行われます。PCRは限られた施設でしか実施できず、培養や抗体検査は結果が出るまでに時間がかかるため、実際には百日咳が強く疑われたら結果を待たずにマクロライド系の抗菌薬が投与されることが少なくありません。
抗菌薬は、発症早期、特に咳が出始めてから1~2週間程度のカタル期に服用を開始することで、症状の軽減や周囲への感染期間の短縮が期待できます。咳が激しくなる痙咳期に入ってからの抗菌薬は、咳の改善効果は乏しいとされますが、菌の排出を抑え、周囲への感染拡大を防ぐ目的で重要です。そのため、症状が軽快したと感じても、医師に指示された期間はしっかりと飲み切ることが大切です。
最も効果的な予防策の一つはワクチン接種です。日本では、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオの混合ワクチンが生後2カ月から定期接種として推奨されています。成人が感染源となるケースも多いため、乳幼児と接する機会の多い成人や医療関係者への追加接種も検討されています。他の感染症予防と同様に、うがい・手洗いの励行や、人混みでのマスク着用が重要であることは言うまでもありません。
◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。
