平均寿命と健康寿命 男女とも最後の10年ほどは他人からの助力が必要に→男性72.1歳、女性74.8歳
「平均寿命」という言葉はよく耳にされると思いますが、「健康寿命」という言葉をご存知でしょうか?簡単にいうと「介護や援助を受けず一人で自立して日常生活が送れる年齢」です。2024年の日本人の平均寿命(男性81.09歳、女性87.14歳)に比べ、健康寿命は男性72.1歳、女性74.8歳と10年前後の解離があります。つまり男性で9年、女性は13年は、支援事業所などから、何らかの介護か看護を受ける必要があるということです。
平均寿命は、生命表を用いて計算されます。仮に10万人生まれたとして、ある年の年齢別死亡率のデータを用いて、1歳までに生き残る人数、2歳までに生き残る人数…と、すべての人が死亡するまでを順次計算します。簡単にいうと、今日生まれた赤ちゃんが、この先、何歳まで生きられるか、つまり「0歳児の平均余命」を複雑な統計学的手法で平均化したものです。
一方、健康寿命とは、年齢階級別に現時点で健康な人の人口を計算し、その合計を10万人で割り算した年数が健康寿命となります。健康寿命の計算には、その他にもいくつかの方法がありますが、地域別の健康寿命を計算するときにはこの方法が標準的に用いられています。これも簡単に言えば「寝たきりにならずに健康でいられる期間」または「自分が健康であると自覚している期間の平均」と考えて差し支えないです。
この健康寿命、日本はここ十数年間、世界一のディフェンディング・チャンピオンですが、それでも平均寿命から比べると、今の日本でも、男女とも最後の10年前後は、他人から何らかの助力がなければ一人では生活できない、ということになります。まさにこれがいちばんの問題で、平均寿命を伸ばすことより健康寿命を延ばし、この先いかにして皆さんが介護を受ける期間を短くするか。すべての医療関係者が直面している喫緊の課題なのです。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。
