「もみじおろしはタブー」の迷信→ニンジンに含まれる酵素が大根のビタミンCを破壊説は本当か?
季節はもう春。お鍋の時期からは遠ざかろうとしていますが、冬に旬を迎えお鍋の主役となる食材と言えば、大根や白ネギに白菜といった根菜ですね。なかでも大根は様々な料理に利用され、栄養学的には、ビタミンA・B・Cに富み、鉄分・リン・カルシウムなどのミネラルも含む上に食物繊維が豊富で低カロリーと、多様な効用を持っています。
さらに大根にはでんぷんを分解するジアスターゼ、脂肪を分解するリパーゼ、タンパク質を分解するプロテアーゼなど、各種の消化酵素が含まれており、食物の消化を助け胃もたれを防ぐ働きがあります。小説『吾輩は猫である』にまで登場する胃腸薬「タカジアスターゼ」。これは高峰譲吉が麹菌からジアスターゼを抽出し、自身の名前を冠して商品化し、製薬会社を創業した過去までさかのぼります。今の「三共製薬」の前身です。餅を食べるとき大根おろしをつけて食べると胃がもたれない、という言い伝えが開発のヒントになったとのこと。
また、大根には白菜やキャベツと同様にアブラナ科に属す植物に特有の辛味成分であるイソチオシアネートが含まれています。イソチオシアネートは抗菌作用、抗癌作用、血栓防止作用などの働きを持ち、大根を刻んだりすりおろすなどしたときに酵素の働きで生成しますが、刺身のツマに細切り大根が用いられるのには、イソチオシアネートによる防腐効果も織り込まれているのです。
さて、料理の彩りによいということで用いられる、大根と人参をすりおろした「もみじおろし」。まさにお鍋に欠かせない薬味の一つですが、以前は栄養学的にはよくないと言われていました。人参に含まれる酵素が大根のビタミンCを酸化して破壊するというのがその理由です。しかし、酸化されたビタミンCは人が摂取した場合、体内ですぐに元の還元型ビタミンCに戻り、充分その機能を発揮するということが近年の研究で明らかにされました。私も含めて多くの人がずっと抱いていた、もみじおろしのタブーは今や迷信なのです。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。
