目指すは日本一ハードルの低い時代劇

 「水曜どうでしょう」を作った男・嬉野雅道氏に再び迫る。いまだに伝説的な人気を誇る人気番組『水曜どうでしょう』。その制作スタッフ陣の中でカメラマン、ディレクターでありながら、タレント以上に人気を獲得している男、それが嬉野雅道氏である。

 現在も自信初のエッセイ「ひらあやまり」(KADOKAWAから発売中)のサイン会などで全国を飛び回っている。そんな多忙を極める嬉野氏が、同じく『水曜どうでしょう』のディレクター藤村忠寿氏、そして関西を拠点に活動する劇団「笑撃武踊団」と共に、時代劇一座を立ち上げた。その名は藤村氏を座長とする「藤村源五郎一座」である。

 聞くところによると『水曜どうでしょう』のDVDの販売枚数は歴代1位を獲得し続け、その売り上げは160億円とも言われている。そして、来年はファン待望の新作も考えているとのこと。忙しさが頂点を極めているといっても過言ではない中、この年末には前述の「藤村源五郎一座」で仙台、大阪と二箇所で公演を行い、なおかつ、その中にあって、講談師という特殊な役割にも挑戦しているという。

 そんな彼に、前回に引き続き、インタビューをお願いした。

 -忙しいのに、よく参加されましたね。

 「いや、やっぱり楽しいんですよ。前回も、この一座で講談師として参加して、東京、大阪、札幌と、お客さんの前で色々と話をしたわけなんですけど、そこに自分の役割がちゃんとあって、その中で、芝居の中にお客さんを連れて行くのが私の役目で、そうやって物語りを語るという事が実に面白いことなんだと自覚したんです。そうなると、参加しない理由はないですからね」

-語る事が面白い?

 「面白いですね。喋ってる分量でいったら、一座の中で一番多いんじゃないですかね?でも、別にそれが苦になるという事はないですね。語る内容もお芝居を見て、後から私が自由に考えて思うように語るという流れなんで、実に面白いですよ。もちろん、語るための下地の様なものは、あらかじめ台本に盛り込んでもらってるんですが、そこから、どうすれば分りやすく、楽しく聞いてもらえるかを考えるのは本当に楽しい作業ですね」

 -テレビとは、また違った面白さですか?

 「うん。違う所もあれば、同じのように感じる所もありますね。『どうでしょう』をやってる時にね、本当に男4人で旅をしてて、それが心の底から楽しいって思えて、でもそれが仕事なんだって感じた不思議な心持ちと、今こうやってお芝居、それも日本一ハードルの低い時代劇と銘打ってやってる面白さは似てるというか、同じなんじゃないかなと思うんですよ」

 -日本一ハードルの低い時代劇ですか?

 「御覧頂くとわかるんですがね、歴史的な難しい箇所や用語を出来るだけわかる台詞に変えて、その上で、私が誰が見ても聞いてもわかるように情緒を持って語る。そうすると何の予備知識がなくても、わかる時代劇になるというわけです」

 -なるほど。最後に一座についてお聞かせ願えますか?

 「そうですね、藤やん(藤村氏)はもうね、この稽古中というか芝居をやってる時は役者だなぁ、と思いますよ。この人はこんな才能もあったのか、なんて驚きもありますしね。他の座員はとにかく自由にさせてくれる人たちなんですよ」

 -というと…。

 「以前に座員に話した事なんですが、同じ物をそれぞれが違う所から見てるんですよ。例えば、目の前にお酒のビンが在るとするでしょ?それを正面から見てる奴もいれば、遠くから見てる奴もいる。裏から見てるのもいれば、とてつもなく近くで見てるのもいる。でも結局、全員同じものを見てるという一点だけは変わらないんです。お芝居でお客さんに喜んでもらうという一点だけは、ずらさない。そんな人たちなんですよ」

 -異能人たちの集団ですか?

 「ただ、不器用というか、普通の社会では生きれないだろうなとも思える人たちで、それがもう人外の者って言うんですかね。よく誰にも見つからずに生きてきたなって感じるところでね。でもね、そういう人たちが真剣に熱くやってる姿ってやっぱり胸を打つんですよ。だからね、是非見て欲しいな、って思うんですよ」

 自由に面白い、楽しい、を地で行って生きていく嬉野氏。その姿は、これからの色んな生き方を考えている人たちの手本となって行くのかもしれない。

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