松山駅「醬油めし」780円

 駅弁業界での心温まる“リレー販売”が話題に上っている。予讃線の松山駅で約80年間にわたり駅弁を販売してきた鈴木弁当店が2年前に撤退。私は松山に着くと必ず駅弁を買ったので残念でならなかった。思い返せば夏目漱石の坊っちゃんを近くに感じながら、汽車辨當、マドンナ辨當や、近海で取れたタコ、エビ、穴子、サバやレンコンなどがのった、漱石、正岡子規、高浜虚子らが好んで食べたと言われる、ちらし寿司の松山鮨。松山駅弁の代名詞とも言われ、1960年に発売されて大人気となったのが「醬油めし」だ。惜しまれつつ一度は松山駅から駅弁は消えた。だがファンの要望もあったせいか、鈴木弁当店が監修し、岡山駅弁の三好野本店が引き継いで製作したこの松山の名物駅弁が、わずか4カ月後に見事復活を遂げたのだ。振り返ると2017年5月に既報済みの「愛媛みかんブリの西京焼き弁当」が両者のコラボ商品の始まりで、最初の付き合いは同年の愛媛国体にさかのぼるという。絆を感じる駅弁業者の深いつながり-。復活させてくれた三好野本店に感謝して箸を取った。

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 掛け紙が厚紙に替わり、右上に鈴木弁当店監修の文字が入ったのが新しい。書かれている相撲の番付表に見立てた愛媛地方の方言は、何度見ても横綱、大関級はさっぱり分からない。

 中身はコンニャク、ニンジン、鶏肉などの入った炊き込みご飯ではなくなり、甘めの醬油で味付けされたご飯の上に錦糸卵、鶏肉煮、山菜煮、椎茸煮、タケノコ煮、コンニャク、ニンジン、ゴボウ、大根漬け、レンコン酢漬け、サクランボが色合いよくのる。

 子供や女性にも食べやすいようにしたのか、具材が一回り小さくなったような気がした。甘みのあるご飯は、どの具材とも合いうまい。別枠にあった高野豆腐、里芋、切り干し大根は復刻版では割愛されたが、値段が安くなったので納得できた。

 岡山から松山まで200キロ強の距離を旅してやってくる醬油めし。今後もこの名物駅弁の灯を消さぬよう、松山駅に着いたら必ず食べると誓ったのだった。

 780円。予讃線・松山駅「三好野本店」tel086・200・1717。(デイリースポーツ・柴田直記)

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