「車なくても生きていける」自動車学校が急に身も蓋もないことを歌い出す

いつの世も若者はいろんなものから離れていく。

タバコから離れ、新聞から離れ、ギャンブルからも、お酒からも、テレビからもどんどん離れていく。そして「若者のナントカ離れ」の代表格が、ご存知「クルマ離れ」。若者の間では運転免許の取得も今や「必須」という感じでもないらしく、自動車メーカーだけでなく教習所にとっても厳しい時代だ。そんな2020年の6月、「実際のところ僕たちは車がなくても生きていける」と若者が歌う身も蓋もないウェブ動画が公開された。制作したのは西鉄自動車学校(福岡県大野城市)、そう、まさかの教習所である。うーん…自己否定?

■コピーライターも「クルマは別に…」世代

「若い世代は車を所有することに対して本当に執着がない。29歳の私も免許は取っていますが、マイカーは持っていませんし、さほど持ちたいとも思いません」

そう語るのは動画を企画した西鉄エージェンシー(福岡市)のコピーライター、松尾昇さんだ。クライアントである西鉄自動車学校もかねてからそんな時流に危機感を募らせていたため、松尾さんは「広告を作るにしても、まずは『多くの若者はもはや自動車に関心がない』という現実を直視しなければ始まらない」と自虐(本音)ソングのアイデアを提案したという。

「電車とバスでこと足りてる」「バイト先まではチャリでいい」「それよりまずはスマホを替えたい」「脱毛したいヨガ行きたい」…

完成したのは、ギターを手に若い男女が本音を歌う素朴かつある意味で残酷なアニメ。歌詞は松尾さん自身が手掛け、作曲と歌は佐古勇気さん、女性ボーカルはYURINA da GOLD DIGGERさん、監督とアニメーションは山本翔さんが担当している。

詞を考える過程で、「本当のところ、自分は車についてどう思っているんだ?」と深く自問したという松尾さん。「真剣に自分を掘り下げた結果、かつてないレベルで“嘘”のない広告を作ることができたと自負しています」と手応えを語る。

とはいえ、そこは広告。車や免許を否定して終わりではない。ていうか、そもそも車にも免許にも当然メリットはある!はず!

歌の後半で彼らは海でのデートやバーベキュー、夜景ドライブなどへの憧れを明かし、「そんな日あの子を誘えるように」「免許くらいは取っとくか」と少し譲歩の姿勢を示す。え、その程度の動機で!?と感じる人がいるかもしれない。でもいいじゃない。松尾さんは「『わかるわかる』と笑ってもらった後、少しでも若い人たちの心に刺さる動画になっていれば」と願う。

私もこの歌に敬意を表して、次に生まれ変わったら西鉄自動車学校で免許を取ろうと思います。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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