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保護団体が預かった4匹は行く当てがない老猫だった 独り暮らしの高齢女性が認知症で入院

 2020年5月、知り合いで犬のボランティアから老猫4匹を預かることになった。当団体にやって来ることになった経緯は、数カ月前に大阪のマンションで独り暮らしをしていたおばあちゃんが認知症で入院し、飼い猫6匹が家に取り残されたからだった。

 その後、飼い主の親族が家に残された猫達の世話をすることになったが、困ったことに何の情報もない。飼い主から聞き出すこともできず、猫達の名前も年齢も分からない。親族は猫を飼ったことがなかったが、しばらくは食事を与えにマンションを通った。ただ、この状況をずっと続けることは難しいため、困った親族が知り合いのボランティアに相談し、当団体に辿り着いたのだ。

 しかし、連絡が入った時はシェルターでも子猫を中心に多くの保護猫を抱えていたため、すぐに受け入れることができなかった。またその猫達は高齢だという情報が入り、自宅で終生飼育をしてくれるボランティアを呼びかけた。

 すると2名が協力してくれることになり、受け入れ態勢が整った。だが、残念なことに、保護するまでに1匹はマンションから脱走し、1匹は亡くなってしまった。脱走した猫は知り合いのボランティアも探しに向かったが、見つけることができなかった。猫は高齢になってから脱走することもあるため、改めて注意が必要だと感じ、残念でならなかった。

 結局、4匹の猫を保護することになった。受け入れの当日は、飼い主の親族と知り合いのボランティアが一緒に4匹を連れてきた。猫は茶トラ柄、茶白柄、白黒柄をしており、みんなかなり痩せていた。ゆっくりとした歩き方で反射スピードが遅く、年をとっているようにも感じた。

 またみんな顔立ちや体形が似ており、4匹はおそらく兄弟だろう。茶トラ柄はトラ吉、白黒柄はクロ、2匹いる茶白柄はペコとチロルと名付けた。チロルは目ヤニや鼻水など猫風邪の症状が見られ、ペコも少し元気がないように感じた。

 体調の良くないチロルとペコを自宅で看て、トラ吉とクロは1匹ずつ預かりボランティアの自宅で看てもらうことにした。翌日、チロルとペコを連れて、かかりつけ医へ行った。すると、腎臓の数値がかなり悪いことが判明し、毎日の皮下点滴と投薬が必要な状態であった。

 自宅でペコとチロルの治療を始めることにしたが、おそらく前日に預けたトラ吉とクロも腎臓が悪いだろうと思い、検査してもらうと案の定、2匹の数値も悪かった。預かりボランティア宅で治療を続けることは難しい。かといって自宅でいっきに4匹もの看取りは大変なことだが、きっちり管理しながら治療を始めるために連れて帰って来ることにした。

 猫達にとっては長年住んでいた家から新しい家に変わり、さらに飼い主まで変わったことになる。10年以上暮らした家と大好きなおばあちゃんから離れてしまったことを考えると、とても胸が痛くなった。大きな環境の変化と腎臓病が原因で食欲不振になり、強制給餌を続けながら4匹とも治療を頑張ってくれた。強制給餌は一気にできないため、少量を数回に分けて行った。

 しばらくしてチロルの猫風邪は治ったが、次は眉間に大きなコブができて破裂した。これは歯の根元が腐り、眉間に膿が溜まっていたのだ。チロル、それにペコとクロも歯が悪く、3匹の抜歯手術をした。徐々にご飯を自力で食べてくれるようになったが、次はトラ吉が後ろ脚を引きずり動けなくなってしまった。

 病院でレントゲンを撮ると、肝臓がんであることが判明。腫瘍が神経を圧迫し、後ろ脚が動かなったのだ。その後、すぐに寝たきりの状態になってしまい、慌てて大阪にあるがん治療に力を入れている病院へ通った。そこでは食事療法や免疫治療、レーザー治療などを施してもらった。寝たきりのトラ吉は同じ体勢が続くと床擦れができてしまうため、数時間置きに体の向きを変えてあげた。トイレもそのままの状態でしてしまうため、清潔な状態を保つようにした。

 トラ吉は頑張って治療を続けてくれていたが、2020年9月に兄弟達に見守られながら息を引き取った。その20日後にはトラ吉を追うようにチロルが腎臓病で亡くなった。

 保護した時から看取りを覚悟していたが、早い別れに残念でならなかった。ペコとクロの腎臓病の治療は、トラ吉でお世話になった先生が病状を診てくれた。積極的な治療で、悪かった腎臓の数値はほぼ正常値まで戻った。老猫の2匹は保護当時から認知症の症状も見られ、寝ている時とご飯を食べている時以外はよく大声で鳴いていることが多いが、ご飯を自力でもりもり食べてくれるようになり安心している。

 特にペコは甘えん坊で、よろよろしながら抱っこをアピールしてくる。それに応えて撫でると、ゴロゴロ言いながらベロを出す仕草がとても可愛らしい。クロはなかなか心を開いてくれなかったが、今では夜一緒に腕枕で寝てくれるようにまでなった。この子達の余生は長くないだろうが、最期まで元気で幸せな「猫生」を送ってもらいたいと願っている。

 動物を家族に迎える時は、寂しいや可愛いという気持ちで飼うのではなく、必ず自身が最期まで看取れる年齢や環境が整ってなくてはならない、と思う。最近、高齢者とペットの問題が深刻化。今回のように高齢者の入院や飼い主が亡くなってしまった場合、動物達の行き場所がなく保護団体に依頼するケースが増えている。

 動物達が高齢になって居場所と飼い主が変わることはとても不幸なことであり、保護されればまだましだが、愛護センターに持ち込まれ殺処分されることもある。保護団体の譲渡条件に年齢制限があるのはこのためである。近頃、猫は20歳前後まで生きるため、よく考えて家族に迎えてもらいたい。

(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)

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