21歳…突然「外でのお散歩」に目覚めた! 今なお変わりゆくご長寿猫・マサヲちゃん お腹から“謎の生物”が出てきたことも?

マサヲちゃんは、今年の8月で21歳になるメスの三毛猫です。

いまから21年前に、Yさんのお母様が近所のコンビニ駐車場にいたマサヲちゃんを保護されました。お母様いわく、「この子はきっとオスやで。そやから名前はマサヲにしよ」という事で名前がマサヲになったそうです。そしてお母様はご近所さんにマサヲちゃんをお披露目し、三毛猫のオスやというと「そら珍しいなぁ」といわれ、益々いろんな人にお披露目したのでした。

ご存じの方もおられると思いますが、三毛猫はまずほとんどはメスです(!)。遺伝子の関係で、通常三毛の柄はメスにしか出ないのです。マサヲちゃんは首に大きな怪我があったことからその後、動物病院へ連れて行かれたのですが、そこの先生にさらっと「この猫は女の子ですね~」と言われてお母様は唖然としたそうですが、名前はそのままとなり今に至ります。

当時、Yさんの家にはオス猫が2匹おり、そのうちの1匹はまだ去勢手術が済んでいませんでした。マサヲちゃんはまだ小さいし、まずは首の怪我を治してから避妊ですね…ということで治療している最中に、あっという間に妊娠してしまいました(当時のYさんのかかりつけ医の判断ミスですね)。生まれてくる子猫は飼えないので、妊娠中でしたがやむなく避妊手術をしました。

マサヲちゃんは保護されて以来ずっと室内で飼われていたのですが、8歳のときお尻から「きしめん」のように白くて平たく、全長1メートルにも及ぶりっぱな「謎の生物」が出てきました。Yさんはびっくりして病院に連れて行き、寄生虫と診断されました。そしてすぐに虫下しの注射を打ってもらったそうです。

これはマンソン裂頭条虫といって、猫がカエルや蛇を食べると、そのカエルや蛇の体内にマンソン君の幼虫がいる場合、感染します。マンソン君は猫の腸管に住み着いて、胃から流れてくるごはんを一部横取りして生活していきます。そして大人になるとジャンジャン卵を産んで、寄生している猫の便にその卵を混ぜて外に出します。寄生虫は、基本的には寄生している猫が死んでしまうと自分の命にかかわりますから、寄生していたとしても猛毒を出すとか寄生されている猫の具合が悪くなるなどの症状は、滅多に出しません。猫が多少痩せるという可能性はあります。

マサヲちゃんが外に出ていたのは8年前ですので、そのときカエルか何かを食べていたのでしょう。マンソン君の寿命ははっきりしたことはわかっていませんが、8歳となると長寿ではないかと思われます。寿命が尽きてお尻から出てきたんじゃないかな…のちにうかがったマサヲちゃんの罹患歴をおうかがいして、私はそんなことを想像していました。(私がマサヲちゃんに出遭ったのは、マサヲちゃんが15歳の時です。)

ところが、マサヲちゃんが15歳のとき、またもや白くて平たくて長~い、例のマンソン君がお尻から再登場してきました。8歳のときにマンソン君をやっつける注射を打ってから7年間、マサヲちゃんは外に出たことはなく、カエルや蛇を食べる機会はなかったと考えられました。ですから、マサヲちゃんのお腹の中には8歳の時点で一度寄生虫はいなくなったはず…??

ですからこのマンソン君について考えられることとしては、

①マサヲちゃんが1歳のときに感染した15歳のご長寿マンソン君…強い注射液にも打ち勝つ強い生命力!

②保護してからベランダや室内にたまたま出没したカエルなどをマサヲちゃんが食べて再感染したマンソン君

…のどちらかなのですが、真実は闇の中です。マサヲちゃんに聞かないとわかりませんが、今回、再び注射を打ちました。

ちなみに、Yさんのベランダには金魚の水槽がおいてあり、ある日ベランダに出てみると緑色に輝くうろこが床に落ちており、横には同居しているオス猫が美味しいものを食べたふうな口をして座っていたそうです。金魚を食べた直後だったようでした。マサヲちゃんも、ベランダでなにかをつまみ食いをしたのかもしれませんね。

マサヲちゃんは保護した当初は大変なビビリで、いつも部屋の隅にひっそり隠れている猫だったそうです。お客さんが来られると直ぐに押し入れに隠れて出てこないし、Yさんには全く懐かなかったのですが、20年かけてゆっくりと、Yさんが大好きになり懐くようになりました。今ではYさんが仕事から帰ってくると誰よりも先に玄関にとんでいき、熱烈歓迎します。Yさんが休日の昼間に寝転んでいると、マサヲちゃんも近くに寝転んで「モフれ!」と注文してきます。

最近では、来客があって玄関のドアを開けると、マサヲちゃんはその隙間から外に脱走しようとするようになりました。そんなことがあまりにも頻繁にあったので、Yさんは「もしかして外に出たいのかな?」と思いハーネスとリードをつけて散歩に出てみました。すると、マサヲちゃんはどんどん歩く歩く!散歩が大好きな猫に変身していたのでした。

さらに最近、マサヲちゃんは食の好みも変わってきていまして、カレーのルゥやチーズ、納豆などが大好きになりました。Yさんが豚の生姜焼きをしようと生姜をすりおろしていると、マサヲちゃんはそれをくれというので鼻まで持っていくと…食べるのだそうです。ナマ生姜なのに!辛くないですか?ちなみに、チューブの生姜を鼻に持っていくとプィっとするそうで、本物がわかるマサヲちゃんです。

生姜は漢方薬の材料にもなります。効果としては、風邪のひき始めの頭痛・鼻詰まりを改善したり、お腹を冷やして壊したときには、温めたり嘔吐を止める効果があります。マサヲちゃんも年を取り、お腹が冷えていたのかも知れません。

もしかして、マサヲちゃんはその効果を知っているのでしょうか?

   ◇   ◇

ということで、私はマサヲちゃんを「長寿猫」として表彰していただくための推薦をいたしました。各獣医師会では毎年秋に、「長寿犬・猫優良飼養者」を表彰しています。長年、家族の一員として愛情をもって愛犬・愛猫を正しく飼養し、他の飼養者の模範となる方とその愛犬・愛猫ちゃんが一緒に表彰されます。今年の受賞者はすでに決まっているとは思いますが、我こそは!という長寿犬、長寿猫チャンを飼っておられる方は、お住いの獣医師会に問い合わせてみてくださいね。

(獣医師・小宮 みぎわ)

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