保護団体メンバーの勤務先に謎の電話 トイプードルを知人に託した飼い主のSOSだった 「一緒に死のうと思っていました」と女性は涙した

2024年春、北関東のある会社に電話がかかってきました。電話の主は高齢の女性でした。彼女は一方的に話し始めました。

「息子が飼っていた犬を引き取って育てていましたが、私は施設に入ることになり、飼えなくなりました。今は知人の家に預けていますが、なんとか助けてくれませんか?」

その会社の事業は動物保護とは無関係でした。しかし、不思議なことに社員の一人は犬保護団体restartdog LIEN (以下、リアン)の関係者でした。誰かに会社の番号を教えたこともなければ、勤め先を公表したこともありません。偶然に女性のSOSを受けることになったのです。

■女性高齢者の話は本当?

リアン関係者が電話を代わり、詳しく話を聞くと、女性の説明はあやふやで、「イタズラ電話かもしれない」と思いました。それでも、もしその話が本当ならば犬のことが心配です。数日後、保護メンバーと共に女性から聞いた電話番号にかけ直しましたが、話は行ったり来たりで要領を得ません。

保護メンバーは一か八か「うちで引き取ります」と言いました。すると、電話の向こうで女性は突然号泣しました。

「私が太らせてしまったので、かわいい子じゃないかもしれませんよ。見てもらってダメならダメで大丈夫ですから」

■「死ぬよりマシでしょ!」

半信半疑でしたが、保護メンバーはひとまず保護に向かうことにしました。女性が預けているという知人宅に着くと、確かにその犬がいました。女性の言葉通り太り気味ですが、人懐っこくかわいいトイプードルです。

しかし、犬がいたのは、吹きさらしの小屋の中。エサはフードが乱雑に置かれているばかりで、適切な世話はされていません。知人に話を聞くと、「この犬? ここに置いてるだけだよ! 死ぬよりマシでしょ!」と言い放ちました。

保護メンバーは言葉を失いましたが、冷静さを取り戻すと、すぐにこのトイプードルを連れ帰ることにしました。

■「ワンコと一緒に死のうと思っていた」

このトイプードルの名前はりぼん。推定年齢11歳ほどのシニア犬で、幸い健康状態は良く、預かりボランティアさんにもすぐ懐きました。笑顔で甘えてくる性格良好のワンコです。

その後、保護メンバーは再び施設に入った高齢女性に連絡しました。「りぼんが元気に過ごしていること」「後にりぼんの余生に寄り添ってくれる里親さんを探すこと」を伝えると、女性はまた涙を流しました。

「本当はりぼんと一緒に死のうと思っていた。それまでに美味しいものをお腹いっぱい食べて欲しいと思って、与えられるだけ与え続けていました。でも、施設に入ってからもりぼんを思い出すと眠れなくなるのです」

保護メンバーはこの話に複雑な気持ちになりましたが、「新しい里親さんのもとでの余生が幸せになることを一緒に願ってください」と伝えました。

現在、りぼんはダイエットをしながら元気に暮らし、新しい里親さんとのお迎えを待ち続けています。この偶然の電話が、りぼんにとって幸せな未来への一歩となることを願っています。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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