阪神・近本 来季FA覚悟の「1年勝負」“メリット”重視で大型契約固辞 チーム最高3・7億円で更改

 阪神の近本光司外野手(30)が10日、兵庫県西宮市内の球団事務所で契約更改交渉に臨んだ。順調なら来季中に国内フリーエージェント(FA)権を取得するが、球団から提示された複数年契約ではなく、1年契約を選択。年俸は5000万増の3億7000万円で、チーム最高となることが確実となった。7年目の来季。不退転の覚悟でV奪還へ導く決意だ。(金額は推定)

 ユニホームを着用している時と同様に落ち着いていた。交渉を終えた近本は、しっかりとした口調で決断を明かした。

 「1年で勝負したい」

 昨オフに単年契約を結んだ大山は、今オフに国内FA権を行使した。来季中にも同じ権利を取得する近本の決断とリンクするわけではないが、主力選手とあって契約年数は注目を集めていた。「皆さんが思ってるほど、そんな(重い)感じじゃない。僕は単年の方がいいなと思ったから」と笑顔を見せながら話し、決断の経緯を説明した。

 「球団の人と話し合う時間が結構あった。すごくいい時間だった」と振り返る交渉では熱意を伝えられたという。

 「6年間、しっかり安定した成績を残してくれた」

 「これからも一緒にタイガースで」

 球団の顔でもある背番号5には、少なくとも5年以上の大型契約が提示されたとみられる。ケガのリスクや活躍期間が限られるプロ野球選手にとって、保障期間のある複数年契約は魅力的。来年31歳を迎える近本も交渉の過程では、選択肢に残していたという。

 ただ、会話を重ねていく中で頭を整理。「複数年よりも、単年に対するメリットの方がいいと感じた。通常であれば単年の契約だと思うし」。メリットについて問われると、「それは言えないでしょ」と明言を避けたが、ストイックな男だけに甘えを排除する意味もあるようだ。

 6年目の今季は6月1日・ロッテ戦(ゾゾ)で自身初の4番を任されるなど141試合で打率・285、6本塁打、45打点。19盗塁で3年連続5度目となる盗塁王のタイトルを獲得した。

 球団の評価は年俸にも表れた。今季の3億2000万円から5000万増の3億7000万円。FA権を行使して残留した大山の1年平均3億4000万円を上回り、年俸額はチームトップを守ることが確実となった。

 来季は入団から3人目の監督となる藤川監督の下でプレーする。「まず1勝を勝って、チームが最終的に優勝できるように頑張りたい」。現在、通算933安打。7年目のシーズンで達成すれば、球団日本選手で最速タイとなる通算1000安打など個人としての節目もある。「大事なのはケガしないこと。ケガしてしまったら目標もクソもないんで。しっかり体に気を付けて頑張ります」。すっきりとした表情で、野球人生の岐路となるシーズンを見据えた。

 ◆阪神選手の1000安打スピード年数 NPB在籍年数で見ると、球団並びにNPB最速がマートンの6年目到達(809試合)。次いで7年目が赤星憲弘(880試合)、鳥谷敬(967試合)。近本が24年シーズン終了時点で通算804試合。1000安打まで残り67安打で、試合数で赤星の記録を更新する可能性も。他球団を見ると、7年目到達は、巨人・長嶋茂雄(849試合)、ヤクルト・青木宣親(770試合)。試合数ではイチローの757試合(8年目)が最速。なお、球団選手のプロ8年目到達は吉田義男(972試合)と藤田平(956試合)。

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