かつての虎エース・能見篤史が引退「やりきった」紆余曲折の野球人生
かつて阪神のエースとしても活躍したオリックス能見篤史投手兼任コーチが今季限りで引退しました。紆余曲折あった野球人生でしたがその表情は晴れやか。さらば〝世界一のワインドアップ〟…ノウミサン、愛してる!
公開日:2022.11.14
【2005年1月29日デイリースポーツ紙面より】
◆能見、3年前に銀幕で甲子園デビューしていた!
実は3年前に“タテジマデビュー”してました―。阪神の自由枠ルーキー・能見篤史投手(25)が、02年に公開された映画「ミスター・ルーキー」に阪神の投手役で出演していたことが、28日分かった。
この映画は、200X年の阪神タイガースに、謎の覆面投手MR・ROOKIE(長嶋一茂)が入団。抑えのエースとして大活躍し、チームを優勝に導くというストーリー。関西地区を中心に、大きな話題を呼んだ。
大阪ガス時代にエキストラとして駆り出された能見は、阪神の投手役として出演。7連敗中に登板して痛打を浴び、ガックリうなだれるシーンが「2秒ぐらい映っていた」という。しかも背番号は、くしくも現在と同じ「14」。事実は小説より奇なり―。ウソのようなホントの話だ。
一年目から頭角、そして虎のエースへ
即戦力投手として阪神入りした能見は、一年目から周囲の期待に応える活躍を見せます。
【2005年4月25日デイリースポーツ1面より】
◆阪神・能見、プロ初星!快投ベイ倒劇だ
阪神期待のルーキー・能見篤史投手(25)が、4試合目の先発で待望のプロ初勝利を挙げた。横浜相手に5回2/3を2失点。打線の援護もあって、うれしい記念星を手に入れた。落ち着いたマウンドさばきには、早くも風格すら漂う。
(中略)
「やっぱり素直にうれしい気持ちでいっぱいです」。敵地・横浜スタジアムのほぼ半分を埋めた虎党の前で、お立ち台に立った。降り注ぐ“能見コール”が心地いい。球場の風景、グラウンドのにおい、スタンドの歓声、勝利の味、ウイニングボールの感触。プロ入り4度目の先発でつかんだ“記念日”を五感すべてで楽しんだ。
(中略)
「ここからがスタート。チームが勝つために、僕もその力をフルに発揮したい」。初白星を手にした“記念日”を境に、若き左腕の物語は新たな章へと突入する。
その後もコンスタントに勝ち星を重ね、プロ5年目の09年には初の二けた勝利を達成。この頃から見出しや記事には〝エース〟の肩書が見られるようになります。
【2009年9月12日デイリースポーツ紙面より】
◆能見、プロ初10勝!細腕エースしなった粘投7回1失点3連勝
試合後のお立ち台。2ケタの大台にも決して表情を崩さなかった。チームの命運が自らの左腕にかかっていることを、能見は知っていた。
四回まで毎回走者を背負う苦しい投球。「スライダーも抜けが多かったし、フォークの落ちもいつもの感じではなかった」。それでも粘り強く要所を断ち切り、2点の援護を守り続けた。
(中略)
プロ5年目で初めて到達した10勝目。それでも左腕は「数字は気にしたことがない。唯一気にするのは防御率。勝ち負けはあとからついてくる」。漂い始めたエースの風格。7月19日のローテ復帰から2カ月足らずで積み重ねた7つの勝ち星がチームの巻き返しを支え、左腕を大きく成長させた。