セはDH制導入すべきか 阪神歴代助っ人のマートン、ブラゼル、ボーア、サンズに聞いてみた
今世紀史上最速で消滅した自力優勝は一夜で“復活”したけれど、阪神タイガースの貧打は深刻だ。ホームベースが遠い試合が続いて、首脳陣、選手、ファンのストレスはなかなか解消しない。もう阪神だけDH制を導入してもいいですか?(笑)ちなみに今春からMLBのナ・リーグがDH制を取り入れたことで、世界のプロ野球でDH制を採用してないのはNPBのセ・リーグだけ。投手が打席に立つ伝統は守り続けるべきなのか否か…カナダ出身の筆者が、SNSのDM機能を使って阪神レジェンド助っ人OBの4人に話を聞いてみた。
まずはセのDH制導入に反対しているクレイグ・ブラゼル。彼の意見はこうだ。「昔のスタイルが好みだな。ルールをいじるのはもうやめてほしい。DHは一つのリーグにあって、もう一つにDHなしがいい。二刀流できる人はDH制度の有無は関係なく現れるんだ」。なるほど。おっしゃることは分かります。一方で残りの3選手は概ね“賛成派”と言っていい反応だった。
ジャスティン・ボーアは「指名打者でいい成績を残すのはそう簡単ではない。それに、現代の投手の技術があまりにも優れていて、投手が打席に立つと自動的にアウトになることが多い」と主張。昨季の開幕ダッシュに大貢献したジェリー・サンズは投手の気持ちを考えながらこう述べた。
「ピッチャーに選ばせたら、8月の神宮球場でダグアウトの扇風機を離れて打席に立つ選択肢を取る投手は1人もいないはず。あの暑さはピッチャーの体調を崩すだけだ」
そして最も興味深い答えをしてくれたのはマット・マートンだった。
「DH制を導入すると、もう1人多くの野手に出場機会を与えることができる。一方で“若くて打力も備わった投手”の可能性を奪うと考える人がいるだろう。登板日に与えられるはずだった3~4打席がなくなるからだ。しかし本当に『打てる』のなら、その投手はDHとして(1週間に)20打席程の機会を得ることができる。DH制があれば(打てる投手を)無理に守備位置につかせることなく二刀流に挑戦させられる。日本ハムやエンゼルスが大谷翔平を生かした仕組みだ。二刀流が可能かどうかは、その選手をスカウティングして獲得した球団なら判断できるはず。そうやって選手を育てたら『打てる投手』にはDHとして1日4打席のチャンスがある」
ちなみに筆者は、DH制導入に賛成。強烈なインパクトを残した「西純矢投手の完投&ホームラン」というドラマチックな試合はなくなるかもしれないけれど、マートンが言うように西純矢のホームランはDH制があっても育成方法次第で見られるはず。それに、サンズがこう付け加えた。「西純矢のパフォーマンスは確かに感慨深い。けれど、それができない投手がほとんどだ。大半の『打てない投手』を打席に立たせる価値がない」。
テレビの実況や解説で、投手が打席に立った時にこんなフレーズを聞くことがある。「この場面は三振すればいい」。投手の出塁時には、次打者に対して「ゲッツー崩れでいい。ピッチャーをベンチに戻してあげたほうがいい」というフレーズも。理論は分からないでもないけれど、それなら最初から本物の打者を打席に立たせたほうが良くないだろうか。
話を元に戻して…DHを打線に入れたら、もしかすると阪神はもっと得点するかもしれない。相手にも同じことが言えるけど、阪神は投手陣が鉄壁なので、より有利なはず。とにかく早めに導入しましょう(笑)
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。