阪神による“球宴ジャック”はアリ?ナシ? カナダ出身阪神ファンが思うこと
交流戦も好調をキープしている阪神タイガース。個人タイトルを取る野手はあまりいないかもしれないけれど、打線がしっかりと機能し、投手陣もゲームを作っている。こうなると人気球団であることを差し引いても、球宴ファン投票でズラリと選ばれても不思議ではない。
実際に現段階で各ポジションの1位は、ほとんど阪神の選手。他球団ファンなら「うちの選手だってすごいんやぞ!阪神の選手より全然いい!」と嘆いてしまいそう。阪神ファンではあるけれど、カナダ出身の筆者もその気持ちはよくわかります。
MLBファンの間でも、オールスターゲームの投票を巡っては、よく激しい討論になります。「贔屓チームの選手ばっかり選んでいる奴は失格だ。野球を見る目がない」と。しかし、筆者の考え方は少し違うんです。
そもそも、球宴というのはファンのための祭典。個人成績とか気にせず、自分が大舞台で見たい選手を選べばいい。だから贔屓チームの選手ばかり投票してもいい思う。いろんな球団のファンによる投票でメンバーが選ばれるわけで、最終的には出場に値する数字を残している選手は選ばれるのだから。
もう一つの観点から。ファン投票開始は5月19日でした。各チーム平均35試合を消化した時点です。しかし開催日である7月19日には、だいたい85試合が終わっています。投票開始からおよそ50試合の期間で何が起きるかなんて誰にも予測できません。ロケットスタートに成功した選手が真夏まで好調を維持するとは限らない。そういう選手だけを選んでいれば、スロースターターは球宴に参加できなくなる。メジャーにも、過去にこういう選手がいました。
エンゼルスで長年活躍したティム・サーモン外野手は通算299本塁打と素晴らしい数字を残しているのに球宴の出場は皆無。スロースターターの代表者だ。だから前年度の数字を見て投票するのもありではないかと思う。とにかく、ファンにはそれぞれの考え方があっていいし、周りの声に左右されずに投票したらいいんじゃないかと思う。
ただ、記者投票によるMVPはしっかり選んでほしい。特に“優勝チームから選ぶ”という暗黙のルールは個人的に正しくないと思う。アメリカではMVP選出がほぼ毎年、大きな論争を巻き起こしている。考え方は大きく2つで、一つは日本と同じく、優勝チーム(あるいはプレーオフ出場チーム)でないチームから選ぶべきではない。もう一つは、チームの順位関係なく、一番良い数字を残した選手を選ぶべきというもの。
過去2年では、両方の考え方が一回ずつ“採用”された。どっちにも大谷翔平選手が絡んでいる。2021年には、チームが負け越したのに満票でMVPに選出。昨年は前年の数字を大きく上回ったのにアーロン・ジャッジ(ヤンキース)に次ぐ2位になった。一番大きな要因はチームがプレーオフに出場できなかったことだった。
ちなみに過去20年で誕生した40人のMVP中、なんと10人がプレーオフを逃したチームから選ばれた。一方、日本では同期間で優勝チーム以外から選出されたのは3人のみ。やっぱり“お国柄”が表れているんだなぁと思う。個人的に阪神の“球宴ジャック”も楽しみだけど、それよりも阪神タイガースの誰かがMVPに輝いてほしい。とにかく、アレに向けて走り続けてよ!
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。